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マッドマックス 怒りのデス・ロードのkyonのレビュー・感想・評価

4.0
昨日地上波でやると聞いてこれを機に、と鑑賞。シリーズものみたいだけど、この作品単体でも十分楽しめた。

多分本編で地上波向けにカットされたシーンがあると思うけど、独裁者に支配された近未来の世界で、記憶もままないまま捕まってしまったマックスが反逆を企てたフュリオサたちと共に逃げる、というシンプルなプロット。

でも台詞が必要最低限に絞られていて、アクション映画というように本編の8割は逃げながら闘うアクションシーンという、これは確かに映画館で観たら爽快だろうなぁとひしひし感じた。

この最小限の台詞で作品が成り立つのはやっぱり作品自体のヴィジュアルが持つ圧倒的な情報量だと思う。

名前が無くなることは個性を無くしてしまうことと同義だといくつかの作品を見て感じたけど、これも同じ。

白く塗りたくられ、刻印を身体に刻まれたいわゆる兵隊たちは名前はあるものの、同じ外装をし、"ウォーボーイズ"と呼ばれる。独裁者ジョーの妻たちも、奴隷たちも、みな求められる役割のまま名付けられ、主人公のマックスすら自らの名前を名乗らない。

こうしたディストピア的な世界が具現化され、圧倒的なヴィジュアルによってこうした説明が誰かに語られずとも観客は状況を把握せざるをえなくなる。

捕まったら死だ、というよりはマックスが言っていたSurvive=生き残る、という表現がこの作品には当てはまる。

そしていわゆる男性優位で権威的な支配に置かれているこの世界だからこそ、フュリオサという強力な女性が同性であるワイブズたちと逃げる構図が面白く感じさせる。

逃走劇がはじまってからはもう疾走感とアクションの連続でたまらん…!目が楽しい状態。なんならフュリオサが魅力的すぎて最高。

両性具有的な彼女は、この作品の中間に位置している気がしていて、支配される世界もそうではない世界も知っていて、男性的な世界に足を踏み入れながら、女性という自身の性から同性の苦しみを引き受ける存在なのが面白くて、ラストの展開を踏まえてもきれい。

それにしてもスキンヘッドがこんなに似合うシャーリーズ・セロンとは…。彼女がスキンヘッドになったことで必然的にウォーボーイズたちもスキンヘッドで統一されたエピソード好き。ヘアメイクさんたち、衣装さんたち大変だったろうな、、笑

しかもこれがCGじゃないとは…。

名前や個性をちゃんと出せる世界で良かったなとホッとする作品でもありました笑
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