イチロヲ

(秘)色情めす市場のイチロヲのレビュー・感想・評価

(秘)色情めす市場(1974年製作の映画)
5.0
街娼の母親(花柳幻舟)により大阪・釜ヶ崎の路地裏に産み落とされた娘(芹明香)が、惨めな境遇に物怖じすることなく、裸一貫で生き延びようとする。厭世家となった若い娼婦の生き様を綴っている、日活ロマンポルノ。

淫売の血からの「脱出不能状態」と、特殊な環境に置かれている人間たちの「生態観察」を、前衛作家・田中登の自動記述法により表現している作品。あいりん地区で無許可のゲリラ撮影(一部、同時録音)を敢行しているため、資料的価値が高い。

「生きるための活力としてのセックス」を暗示させる場面の連続性が見どころとなっており、知的障害者である弟(夢村四郎)の性処理問題を憂える場面と、ダッチワイフをエロスの神様的に崇めていく場面が脳裏に焼き付く。

人間の営みを俯瞰から眺める主人公の佇まいが絶妙であり、独特の空気感に全神経が持っていかれる。「Let it go!」(流れに沿って進め!)の王道パターンを、反抗と虚無が同居するアシッド空間の中で描いている、レジェンド級の逸品。

余談だが、芹明香は本作Blu-rayの発売後、2016年10月の特集上映にてトークショーに登壇。長らく沈黙を保っていたため、ある界隈では大事件となった。個人的には、Blu-rayにコメンタリーを吹き込んで欲しかったが、突然の登壇で沈黙に戻るところも芹明香らしくてアリかと。
イチロヲ

イチロヲ