まつこ

(秘)色情めす市場のまつこのレビュー・感想・評価

(秘)色情めす市場(1974年製作の映画)
4.5
ロマンポルノリブート記念でリバイバル上映をしていた本作。

西成界隈で性を売って暮らす女の物語。

鐘が鳴り響くたびに全身が硬直した。出てくるオッサンたちの生臭さがこっちにまで漂ってきそうな臨場感。出だしから色んな意味でゾクゾクが止まらない。モノクロに浮かぶ赤い文字に期待が高まる。

芹明日香さんの瞳の強さに釘付けになった。映るたびに画が締まる。

彼女が演じた主人公・トメは、オッサンたちにモノの様に揺らされていても「はよ、どきーな」と虚ろな表情でビシッとやっつけるアナーキさを持ち、殴られてもヘラっと笑って乳に当てたガーゼをビール瓶にはっつけるような粋なひと。

母も現役娼婦のため父は客の誰かで検討もつかないというどうしようもない背景で育ち、唯一気の置けない種違いの弟は知的障害者とタブーばかりの設定ではあるが、その弟だけに向けられる慈悲深さが彼女を複雑にし、余計に愛おしいキャラクターにさせていたように思う。(…そんなこと言ったら「あんたにウチの何がわかるんなー」って怒られそうだけど。)

どのシーンも好きだけど、やっぱりサイコーなのは通天閣のあのシーン。カラーとモノクロの交差に唸った。飛べない鳥が自由に空を飛んだなら、あれは「よかったね」というべきなのか。

ようやく観れた本作。教えてもらった方がお辞めになられたので読み返せないのが残念だけど、ここでの出会いがなければ観ることもなかったのかなと思うと感慨深い。

もしも私の駄文で気になった方がいるのなら、「10分に1回絡みを入れる」というルールがあるのでそこには胸やけしそうだったけど、ポルノ作品というだけで避けるには勿体ない作品と伝えたい!しかも今なら劇場でも観られるかもしれません!

サイドストーリーとして語られる娼婦に堕ちる女とヒモ男の物語もそのオチも面白かった。

ここでしか生きられない人たちの悲しい性。こんなにも虚しいのに人情を感じるのは何故だろう。
絶妙な笑いと虚無感が上手く同居した聞きしに勝る名作。

ロックでアヴァンギャルドな大人版じゃりン子チエと思ったのは私だけだろうか。
まつこ

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