マヒロ

(秘)色情めす市場のマヒロのレビュー・感想・評価

(秘)色情めす市場(1974年製作の映画)
3.5
大阪の釜ヶ崎……いわゆるあいりん地区で娼婦の母親に路地裏で産み落とされたトメ(芹明香)は、母と同じように娼婦として生活していたが、突然思い立ち働いている店を辞めフリーでやっていくことにするが……というお話。

関西に越してきて数年経つが、未だに立ち寄ったことがないあいりん地区(あえて行くような場所でもないけど)。今作では実際に現地でロケ撮影を行っているらしく、その未知の実態を垣間見ることが出来たような気分。正直なところあまり良い印象を持っている地域ではなかったんだけど、トメを始めとした住人達のどんな状況でも前向きな姿勢とかを見ていると、そこで暮らす人はその人なりの人生哲学でもってそこに身を落ち着けており、決して生きづらい場所ではない…むしろある種理想郷のようなところなのかもしれないということを考えさせられた。

一応ポルノ映画ではあるしスケベするシーンも数多く出てくるが、そもそも画面は極一部を除いてほぼ白黒だし、絡みの場面は汚ったないおっさんがぐちゃぐちゃやっているようなもんで、エロいかと言われると全くそんな事はない。
ポルノ映画としてそれはどうなんだ、という気もするが、この映画で描かれているのはそんな状況でもたくましく生きるトメという女性の生き様についてであり、人間賛歌の物語とも言える。大映の映画なんかで良く同じような職業の女性を描いた作品があったりするけど、そういう大手スタジオでは描けないような剥き出しの部分まで遠慮なしに描けるのは、ロマンポルノというジャンルの強みなのかも。

トメの母は今もなお娼婦として働いており、客を盗ったトメを怒鳴り散らしたり、かと思ったらある理由から猫撫で声でお金をせびり出したりとなかなかの厄介者で、元職場の女将に仕事を辞めたことから旦那をけしかけられ暴力を振るわれたり、嫌な客にとんでもないプレイを強要されたりとトメは割りかし酷い目に遭っている。それでもどこふく風といった飄々とした態度でふてぶてしく突き進むトメの姿は素直に格好いいし、演じる芹明香のやさぐれ演技がかなり上手い。他に何か出演作観ているかなと思って調べたら『仁義の墓場』で渡哲也にヘロインを覚えさせる大阪の釜ヶ崎の娼婦を演じていたらしく、その地味な共通点が面白かった。この作品に出ていた所以だったりするのかな。

(2020.85)
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