パワードケムラー

THE NEXT GENERATION パトレイバー 第5章のパワードケムラーのレビュー・感想・評価

3.0
 『遠距離狙撃2000』には学生運動に熱中した押井守監督の作品全体に見られる共産趣味と衒学的要素に満ちており、本作の監督は押井守監督ではないが、その影響を感じる作品だと思えた。スナイパー同士の対決ということのせいか、レイバーのレの字も登場せず、塩原のなミリタリー小噺と後藤田と高畑の政治闘争談義という衒学的なストーリー展開だった。

 一方でカーシャを演じる太田莉奈さんの美しさを全面に感じ取れる作品でもあり、彼女の銃剣の型の訓練や、物思いに耽りながら煙草をふかす場面などからは泉野明とは違う魅力が溢れている。

 しかし、昨今のウクライナ情勢によるロシア軍の醜態の数々を見せられると、ロシア軍にこんなキレもののスナイパーや諜報員などおらず、実際は人海戦術と倫理観ゼロが強みの国家なのではないかと思う。なので、このエピソードそのものが共産趣味か『ゴルゴ13』の読み過ぎな製作陣の持つ妄想と、神秘的なベールに包まれていた(当時はプーチンのイエスマンしかおらず、ウクライナでの戦況すら怖くて伝えられないような連中だとはしらなかった)ロシアの諜報機関と露軍への佑馬のようなミリオタたちの妄想の間の子でしかなかったのかもしれない。

 『クロコダイル・ダンジョン』にもレイバーの要素は一切合切登場しないが、こちらはコメディ寄りとなっており、旧作での出来事の続編となっている。実がカーシャがネズミが苦手だとか、明の爬虫類嫌いというキャラクターの細かな設定を文字通り掘り下げており、地下迷宮での映像は各自のヘッドカメラのものという(パラノーマル・アクティビティのような)モキュメンタリー方式という試みも行われている。

 全員がちょっとずつキャラ崩壊を陥るくだりや、『フランケンシュタインの怪物 サンダ対ガイラ』のパロディなど、特撮を含めたオタクネタ全開のコメディで楽しめる。VFXよりも特撮にお金をかけているのでは?とすらまで思ってしまう。

 全体を通してみた感想としてはカーシャ、制作陣に愛されているなぁ......