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ハーフネルソンのmochikunのレビュー・感想・評価

ハーフネルソン(2006年製作の映画)
3.8
僕はこういう問題が解決しないまま、同じことを繰り返す生き方に戻ってしまうだろう的な物語が大好きです。だって大半の人の人生ってそんなもんだと思いますから。

この映画のラストがたまらなく好きな理由は、先に書いた通り抱えている問題がまったく解決していないのに(その予兆は感じられるけれど)、とりあえずその日は良い気分で過ごせそうな感じで終わっているからなんです。
束の間の幸福から感じる切なさ。その切なさがストーリーに盛り込まれると、グっと味わい深いものにしてくれますよね。

特に本作の主人公は薬物の為ならなんでもするような暴力性だったり、中毒者を描くものにありがちな汚らしい醜さだったりが一切なく、薬物に溺れているというよりは、なにか精神的に参ってしまうトラウマ的なものから目をそらす為に、薬物に手を出しているように感じられました。
「あぁこの人は自分のこと心底ダメな人間だと思ってるんだろうな」という気怠い哀愁を帯びたライアンゴズリングの表情がひしひしと感じられて、それがスゲー切ない。ちょっと見てられないくらい切なかったです。

前半はわりと正気を保っていた主人公も、後半になるとかなり落ちぶれた状態になってしまいましたが、主人公が抱えている問題は家族に原因があるように思ったんですけれど、それが父親なのか母親なのか弟なのか、はたまた全員なのか判断つきませんでした。

あと、歴史は相反するもの同士の衝突だ、みたいなこと言ってたこと。そして、アメリカで起こったいくつかの人種問題から起きた事件。それらがどういう意味合いを持ってストーリーに絡んでいたのか、解釈の幅が広すぎて判然としないところがありました。

またしばらくしたら再び見たくなるような映画でした。
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