ゆん

テーター・シティ 爆・殺・都・市のゆんのレビュー・感想・評価

5.0
モラルも魂も心意気も、この世のものは全て血潮と内臓にまみれてしまえ!遠慮も配慮も一切ナシの残酷絵巻。一体この作品の魅力を、どのように伝えたら良いだろう!

犯罪者予備軍を自殺させ、その死肉を食肉利用するという近未来都市テーター・シティで、主人公も犯罪者予備軍として捕獲されるが、力を手にいれ政府への反逆を始める。
「アダム・チャップリン」同様、弟のジュリオ・デ・サンティが監督兼主演という形をとる。
これは制作費によるところが大きいのだろうが、本作の大きな魅力の1つである「親近感」を印象付けるために、むしろ必然的なキャスティングだと思えた。
そして当然のように、監督である主人公にも凄惨な肉体破壊が行われる。そこにはいびつに歪んだナルシシズムと自己顕示欲が溢れているようで、いとおしく、どこか身近に感じられるような人間性が映し出されている。

爆発的な創作への熱意と、確実な職人技術、そして緻密な計算に裏打ちされたCG処理。どれをとってもハイレベルなものを持ちながらも野心に溢れ、そのために未熟に見えたり泥臭くなってしまうことを厭わない。
画期的だったのが、ほぼ全編をCGを使い、主人公の顔のパーツの位置を福笑いよろしく滅茶苦茶に崩していたことだ。どうも怪電波の影響で凶暴化したことを視覚的に表現したようなのだが、これが実に不気味で只者ではない主人公感が出ている。
低予算映画で最も大きなハードルが、良い役者に恵まれない事だ。もし恵まれたとしても、タイトすぎるスケジュールの中で演技指導や意志疎通が疎かになり、演技にまで気が使えずに、大作に比べるとどうしてもお粗末な出来になってしまう。
ほとんどプロの役者を使っているとは思えない「アダム・チャップリン」と「テーター・シティ」は、その難題をクリアし、どんな大作でも手に入れることの出来ない強みを身に付けた。その奇跡に、ひらすら、ありったけの賛辞を送りたい。
ゆん

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