イチロヲ

「エロ事師たち」より 人類学入門のイチロヲのレビュー・感想・評価

4.5
非合法の性産業に携わっている中年男(小沢昭一)が、未亡人(坂本スミ子)と連れ子(佐川啓子)の人生模様に干渉していく。野坂昭如・著「エロ事師たち」を原作に取っている、人情喜劇映画。筆者は原作を読了済み。

端的に言うと、「世界はエロでまわっている」を提起している作品。庶民に対して活力を与える立場であるにもかかわらず、社会的には日陰者扱いされるばかり。そんな、エロ・コンテンツを提供する側の悲哀が切々と説かれる。

物語内容は、エロ事師の主人公が、未亡人の娘の「商品化」を憂えながら、父親脳と事師脳のシーソーゲームに苛まれていくというもの。あばら家の猥雑な生活風景が映像に収められており、レトロな日用品に興味が刺激される。

原作とは異なる脚色が施されているが、「生きていることを実感するためのセックス」を着地点とする語り口が秀逸。ダッチワイフ製造工場に置かれている仏像の素体が、罰当たりであると同時に、真理でもある。
イチロヲ

イチロヲ