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神田川淫乱戦争のmingoのレビュー・感想・評価

神田川淫乱戦争(1983年製作の映画)
3.5
シネマヴェーラにて鑑賞。
先々週一週間はヴェーラや試写会で黒沢映画6本に、本人に2回遭遇、篠崎誠との対談集「黒沢清の恐怖の映画史」を読み込むというなかなか黒沢づけの日々をおくった笑

この監督まじで凄えな、と思ったのが「恐怖」に対する嗅覚とこだわり。
以前ちがう作品のレビューで「なんでも撮れる」のが凄いと絶賛したのだが、恐怖映画というのは観客をいかにビビらせるかにすべての力を注ぎこんでるので、演出や脚本それこそエンタメ作品なんかより上回る難しさを実践しなくていけないわけで、そりゃなんでも撮れるか〜て納得したのがここ最近。

そして本作がここまでカルト映画化してるのにはわけがある。ドキュメンタリー作家の森達也が森太津也名義で出演してるし、助監に水谷俊之、周防正行 、塩田明彦などが参加してるし、美術に万田邦敏がいちゃうので完全に立教ヌーベルバーグ勢の記念碑的作なのは言うまでもないし、邦画界でも稀有な存在である黒沢清のデビュー作とあっちゃ冷静でいられないよねって話です。

長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」の制作進行として参加して、相米の「セーラー服と機関銃」に助監で参加、その流れからディレクターズカンパニー制作の本作で83年商業デビュー。明らかに正統な流れをくんでいる。

内容は別にどうってことない近親相姦もののゴダールテイストヌーベルバーグなのだが、やはり熱を帯びはじめた時代性や非商業主義的映画を目指したからこそ反映された思想性があるように感じるが、実はその反対、つまり無意味を撮っているのではないだろうか。

上記の黒沢清はじめ他の監督たちはATG、アートシアターギルドと続く文脈(思想に縛られた大島渚、吉田喜重など)を軽々と飛び越え、一気に新時代の商業娯楽作品を撮るようになるのもうなづける一本。

黒沢清の作品からは演出脚本しかりなんでもござれ、映画撮るのに怖いもんなんかはねえ!ときこえてきそうである。
彼らが新時代を切り開いてきたように、今後の映画の魂はどこに向かうのか考えさせられた。芸大勢頑張れよ…
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