七沖

ヒックとドラゴン 聖地への冒険の七沖のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

〝会えば、きっと好きになる。〟
このキャッチコピーは、二作目を劇場公開しなかった日本ならではだと思う。過去作を知らない新規客の開拓を狙っているかのようだ。
そして、本当に3作目から観ようとしている人がいたら言いたい。
すごくいい話だから、今作からでもいいので是非観てほしい!冒頭に過去作のおさらいムービーもある親切仕様だ。

ドラゴンとの共存を進めるヒックたちだったが、住処のバーク島はドラゴンで溢れかえってパンク寸前。ヒックは伝説の新天地を目指すことを決断する。一方その頃、凶悪なドラゴン使いがヒックたちのドラゴンを狙っていた…というストーリー。

まず、序盤でトゥースが自力で飛べそうな雰囲気になっていることに驚いた。ヒックとトゥースは一緒でこそ飛べるというのがこのシリーズのセオリーだったからだ。
トゥースが自力で飛べるということは、ヒックが必要でなくなってしまうのか…という不安をはらんだストーリー展開だったが、結果的にはとても良かった。
本作は別れの物語だ。
まさか…まさかドラゴンたちと別れる展開になろうとは。なんだかんだいいつつ、二種族はいつまでも楽しく幸せに暮らしました、というオチだと思っていたのに…。
だが、悲しいだけの別れではなく、ドラゴンたちの幸せを想っての別れだ。このシーンではボロボロ泣いてしまった。

トゥースは自力で飛べるようになり、ずっと探していた同族のライトと出会う。
じゃあヒックだけが片足不自由なまま取り残されてしまうのかと危惧したが、その時彼の傍らに居て、1作目のトゥースのように彼を支えたのはアスティだった。
そうか、これからはトゥースに替わって彼女がヒックの相棒なんだと分かった瞬間、また涙が出てきた。

ドラゴンの新天地の描写は素晴らしく、ちょっとアバターっぽいが3作目の技術力だからこそ描けた映像だと思う。このシリーズは映像の進歩も目覚ましい。
前作でたくさん描かれたドラゴン同士の可愛らしいやりとりも健在で、特にライトを前にしたトゥースの反応は必見だ。求愛ダンスが衝撃的にキモい。

悪役のグリメルはいまいちパッとしなかったが、設定だけは完璧。彼はいわば、ありえたかもしれないヒックの影の部分だ。1作目でヒックがトゥースにナイフを振り下ろしていたら、ヒックはグリメルになっていたかもしれない。惜しむらくは、グリメルにはもう少し強敵感が欲しかった。
このシリーズ共通の欠点を強いてあげるとすれば、悪役の退場のさせ方が雑だということだろう。

今作から初めて「ヒックとドラゴン」に触れた人がいたら、さらに追加で言いたい。
過去2作もすごくいいし、観たら3作目の良さが倍増するから是非観てほしい!
出会い・共存・別れを描いた、素晴らしい3部作だと思う。
七沖

七沖