晴れない空の降らない雨

カンフー・パンダ3の晴れない空の降らない雨のレビュー・感想・評価

カンフー・パンダ3(2016年製作の映画)
3.6
 いつの間にか日本で劇場公開されなくなったドリームワークス作品。『ボス・ベイビー』で、2018年に日本の映画館に帰ってくるけど、どういう勝算だろう。正直、日本人ウケする内容に見えないのだが。
 
 そんなわけでビデオスルー(今は「配信スルー」と言うべきか?)された『カンフー・パンダ』の3作目。前作から、敵と味方をあらわす色が逆転しているのが面白かった。というだけでなく、前作と類似の色を用いながら雰囲気が反対になっている。翡翠をモチーフにした敵側は人工的な蛍光色の緑で、前作で味方側をあらわしていた竹林や苔などの自然界の緑とは対照的だ。反対に味方側はというと夕日・暖炉・提灯などの温かみのあるオレンジ。これも前作で敵側をあらわしていた火力兵器の攻撃的な赤と同系色とはいえ、意味合いも印象もまるで違う。
 こういう色への遊び心は、中国文化における色の重要性を意識しているのだろう。そして色を面として強調するので、そのための2Dパートの挿入や、陰影・ディテールを省いた疑似2D的表現もやはり健在だ。回想、それから修行や「魂の王国」での最終バトルなどで使われている。
 また、2Dならではのデザイン性溢れる画面分割や、そこからのワイプアウトの多用も目立つ。こういった試みは、コミック的な視認性を追求しているのだろうか。というのも、500年前の出来事を記録した絵巻物が出てくるからだ。ここからイメージを膨らませて作品を統一するデザインにしたのかもしれない。
 ひょっとするとスタッフの中に、高畑勲の『十二世紀のアニメーション』を読んだ人がいたりして。同書で高畑は、絵巻物のなかに「動きの表現」を認めており、日本の伝統文化のなかに今日の漫画やアニメとの連続性を見いだしている。同書を知っている人がいたかどうかはともかく、同じ発想に基づいているのは確かと思われる。ただ、ちょっとやり過ぎで、コストカットが目的かと邪推してしまった。
 
 テーマ的にも敵=支配/略奪で、味方=仲間/贈与という対比が、色の対比を使いながら映像や展開で表現できていてよかった。そこに、「本当の自分とは、他者との関係にある自分なんだ」という答えを見つけるポーの人格的成長の物語もよく接続されている。
 1作目で導師が使っていた謎のワザの伏線も何気に回収していて、最初からここまで考えていたのか、後から膨らませたのか、どのみち上手い。ただ、正直出がらし感も否めなかったので、これで綺麗に完結してくれると嬉しい。