レンタルだとDVDがないようで、久しぶりにビデオデッキで観た。笑
”イットガール”ってファッション雑誌で度々見かけるたびに、今旬の女性たちの意かな、って勝手に理解していたけど、由来はこの作品からだと知って、映画のもたらした影響すごくない?ってなる。
IT=女性は男性に、男性は女性に対して発揮される磁石のように異性を惹きつけ、内面の魅力も兼ね備えた性質、といった定義を冒頭にもらいます。内面も、ってとこが面白いよね、美人で性格も良い、いわゆる理想的な女の子=ITというわけです。
で、そのITは持ちつつも一般庶民のデパートガール、ベティは自分のデパートの新しい社長であるボスに狙いを定める。
快活で向上心強め、でも病気がちな友人に代わって子守もする優しい一面も、ギャップ萌えがすごい。笑
見た目は当時のモダンガール姿でボブに華やかなメイク、膝丈くらいのスカート。デパート勤務だから、最新のお洒落は心得てる。
ただ作中にもあるように、モダンガールたちって前衛的な存在でもあったから、現代にも通用するこの女性たちは当時はふしだらだと思われていた側面もあって、その道徳観との兼ね合いがあの赤ちゃん事件笑
友人の赤ちゃんなんだけど、病気を患ってるから、旧来の価値観を持つ隣人たちに取り上げられそうになる。ベティはそれをかばって、私の子供よ!と言い放つ。
この総動が記事になる!って乗り込む記者は若きゲーリー・クーパー。笑
ボスの部下も勘違いして、
ボスに誤解を与えるところから、王道のラブコメが。
最後にはもちろんくっつくんだけど、その過程が花男を思い出す。笑
庶民的な女性がお金持ちの男性を庶民側に引っ張り込む、周りにはいない女性に出会ってしまった感満載な男性の図。笑
違うのは、ベティが自分の魅力をちゃんとボスに使っていたこと。
比較的長めに彼女の顔が映される場面が多くて、見つめてからふっと目を伏し目がちにする流れがね、すごく美しい。
余韻が生まれる撮り方するなぁって。
ファッションも面白い。
1927年の作品、ちょうどシャネルのブラックリトルドレスが大人気になっていたり、上流階級の令嬢たちは、30年代に向かってドレス丈が長めになっていたり。
Iラインやローウエストが多い中、ベティはウエストマークのスタイルを貫く。
少女感が強く出るのと、彼女が主役だとわかるようにしたのかな?
従業員にボーナス渡す場面とか、ずらーっとデパートガールが並ぶ中、やっぱりベティにちょっとした違いを感じて見つけてしまう。
一般階級だから、ある程度のお洒落は出来るけど、さすがにリッツとかのディナー用の正装ドレスがなくて、自分でワンピース切ったところとか印象的。
ただ限界があって、その前にボスの婚約者みたいな上流階級の令嬢のショットが映されて見事にベティの姿が相応しくない装いだと観客にわからせるのね。
だからリッツの店員は目配せて、端っこの静かな席に連れていこうとするのが、すごくリアルというか。
でもここで負けないのがベティという女性の強さ。
自分の意志がありありと感じられる彼女の表象は重要。
ファッショナブルな装いが映される映画の魅力は視覚的なショットの強さ。
ラストの船を背に向かい合うベティとボスの間にITが現れるショットのなんとお洒落なこと!
そして、ここまで語られてきた『あれ』、サイレント作品でございます。笑
すっごく繋ぎが上手くて、普通に現代にも通用するプロット。
ふと思ったのは、やっぱり台詞や説明がない部分に浮かび上がる状況や立場、心情を視覚的に訴え、伝える部分でヴィジュアルやファッションの力は発揮される。当たり前なんだけど、忘れるくらい映画を観ることに慣れてしまっている気が…。
多分ファッションの情報を知るとかなり面白く観れるラブコメ作品でございます。