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ソロモンの偽証 前篇・事件のtjZeroのレビュー・感想・評価

3.7
聖夜の中学校で起きた、男子生徒転落事件。
当初は自殺と思われたが、他殺を告発する文書が各所に届き、学校、保護者、マスコミをも巻き込んだ大騒動に発展。
大人たちの隠ぺい体質に納得できない生徒たちは、自分たちで裁判を起こすことを決意する…。

原作(宮部みゆき)は、文庫本で6冊もある長編だったが、寝る間も惜しんであっという間に読み終わった記憶がある。

メインの十数名の生徒たちの性格や背景が精緻に書き込まれ、それらが事件と裁判を通して複雑に絡み合っていくのが読み応え充分だった。

この映画化では、いくら前後編で4時間あるといっても原作ほど細かくは描けないので、うまく省略しているなあ、という印象。

その分ヒロインの女生徒が裁判を起こすきっかけも変更しており、動機として弱いのだが、それをフォローしているのが役名と同じ藤野涼子の演技。
凛とした芯の強さを感じさせ、校内裁判を実現に向かわせる説得力がある。

彼女を始め、生徒役の若手俳優たちの演技がみな適確で、緊迫した場面でのテンションの高さもしっかりキープしている。

多数出ている大人の俳優たちよりも自然な演技をしている者が多い…という意味では、あくまでも裁判の主役は生徒たち…という原作の精神を忠実に反映しているとも言える。

社会や学校やマスコミの言いなりではなく、自分たちで民主主義を実行しよう、という”十二人の怒れる男~”ならぬ”数百人の立ち上がった生徒たち”による法廷を描く後編にも期待したい。
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