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トゥモローランドののらのレビュー・感想・評価

トゥモローランド(2015年製作の映画)
2.5
ディズニーランド内のテーマランドのひとつであるトゥモローランドの映画化だが、正確にはウォルト・ディズニーが構想した理想都市 EPCOT が存在していたらという内容の映画で、比較的オーソドックスなジュブナイル映画になっている。

特に80年代 SF 映画へのオマージュと、ジュブナイルの組み合わせはアイアン・ジャイアントを監督したブラッド・バードならではで面白いのだが、本作の問題はトゥモローランドとは何なのか?というのが良くわからない事に尽きる。

これは本作におけるトゥモローランドという都市が、単に科学技術が発達した未来都市と言うだけでなく、キリスト教における天国または神の御国をモチーフにしている部分にある。つまり一定の文化的な背景を持っていると理想郷として機能するが、そうでない場合はありきたりな未来都市に過ぎないのだ。

実際トゥモローランドに行くにはエージェント達によって招待される必要がある。つまり本作におけるアテナを始めラストでトゥモローランドに相応しい人間を探し出すエージェント達は明らかに天使をモチーフにしているし、モニターという措置を使い人類を破滅へと洗脳するニックスとその手下は堕天使のそれを連想させる作りになっている。

つまり本作は科学技術を全面に押し出しているにも関わらず、極めて宗教色の強い話が展開されているのだ。

もちろんアテナを演じたラフィー・キャシディは非常に魅力的でキュートなキャラクターを演じている。またフランクとケイシーの年齢差が絶妙で、親子でみると子供はケイシーに感情移入しやすいし、親はフランクに感情移入しやすいのでジュブナイルではあるが大人も楽しめるよう配慮されている点も良くできている。

また本作に出てくるガジェットは魅力的だ。そして冒頭の万博の再現シーンの気合の入れようには驚くが、そのせいか肝心のトゥモローランドの描写が淡白に感じてしまう。結果的に悪い映画ではない事は理解できるのだが、心が物足りなさを感じずにはいられない映画になってしまっている。
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