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真夜中の五分前のハルのレビュー・感想・評価

真夜中の五分前(2014年製作の映画)
3.8
フォロワーさんにお勧め頂いた作品。
harema25さんありがとうございます。

本作、三浦春馬以外のキャストは知らない方だが、すんなり物語に入れた。序盤から中盤までは少しスローリーな展開、かつ落ち着いた雰囲気で交わされる言葉の数々に心地よさすら感じられ、凄く好きな雰囲気。

アンティーク調な時計の針の音、オルゴール、劇中に使われるBGMなど全ての「音」が優しく彩られているのも印象的。

そして何よりも、三浦春馬は純粋に凄いなと。
今作でも日本語・中国語・英語と使い分けており、努力家の彼の事だから違和感なく言語を扱えるようになるまで必死で習得した事が伺い知れる。

劇中、良(三浦春馬)が時計を触っているときの仕草からも、職人気質で崇高
な雰囲気を感じ取れるので、才能と努力を兼ね備えた役者である気配が漂う。

所作一つで唸らせ理解させる。
こういった表現力は本当に素晴らしくキャリアの為せる技。

また、ちょっと不器用だけど優しく他人を想いやれる良の言動に、実際の彼とリンクしている部分が見て取れたのも感慨深い。

その他にも作品全体を通して、光の使い方に拘っている点が強く脳裏に残った。
穏やかな物語のテイストに合わせてカフェの明かり、時計修理時の明かりなど色彩豊かに表現されている。

後半は特にミステリアスな雰囲気を漂わせるためこういった「光の塩梅」がプラスに働き、ステンドグラスの妖しい光が心をざわつかせるアクセントにも。

本作の本筋としては、双子で生きていく事の難しさと息苦しさに身が震え、一緒でいられることの安心感よりも比較され、奪われていく事の苦しみを強く訴えてくる。

一卵性双生児の双子だと普通に生きていくだけでも、アイデンティティを保つ事が困難に感じるだろうなと考えさせられた。

しかし、それでも大切な存在という相反する感情を、それぞれに内包させるのが「血縁」というものなのだろう。

そんな異国の地で出会った思い悩む一人の女性に対し、受け入れ包んでいく良の器量の広さが心に染みる。

何かを共有する事でお互いを近くに感じ、心を擦り寄せて行く過程は美しく儚い。
そして、脆くもある。

そんな折の事件。
この展開は予想外でハラハラした。
この先どうなっていくのか、生き残ったのはルオランとルーメイどちらなのか全く分からなくなった。
この行程の演出方法が上手く、敢えてすぐにその疑問を鑑賞者に抱かせた上で、迷路に誘い込むところに行定監督の手腕を感じる。

最後の流れはこの作品の結末に相応しく、切ないながらもお互いが歩みだす形で締めているが、それもまた余韻として良い形で残った。

この話、小説未読のためはっきり分かってはいないが、恐らくルーメイが生き残ったはず。
たた、元々二人のアイデンティティは混在する事も多く、悲劇な事故と周りの対応が相まって、さらにルーメイが自信喪失で困惑してしまったのが原因なのかなと、推測。

「真夜中の五分前」は異国の地で堂々と芝居をしている三浦春馬が日本人としてどこか誇らしく感じる作品でもあり、心情と言葉を繊細かつ丁寧に紡いでいる良作。

前半と後半でテイストを大きく変え、ラブ・ストーリーにミステリアスな要素を加味している点が特筆すべき魅力的な部分に感じた。
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