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卍 まんじのemilyのレビュー・感想・評価

卍 まんじ(1964年製作の映画)
3.8
人妻の園子は若い女性光子のとりこになり、やがて二人は裸体を披露しあい、怪しい関係に陥っていく。そこに光子の恋人綿貫が加わり、光子への愛を分け合う兄弟の契りを交わす。この関係は光子の夫にも知れ渡り、なんとか綿貫との関係を清算しようと策にでるが、今度は夫と光子の情事を目撃してしまい・・・

 昭和のレトロなインテリアや衣装に包まれた光子を演じる若尾文子×園子を演じる岸田京子。サクサク物語が展開し、男を巻き込み2度の三角関係は、情事からしっかりサスペンスへとシフトしていき、寄り添う音楽もシーンを盛り上げてくれる。光子の魔力に周りは翻弄されていき、その甘えた声の魔法が周りを破滅へ追いやっていく。

 岸田京子のねっとりとした声質が体にまとわりつくように、じっとりと関係を複雑化させていく。彼女にはまっていく園子とその夫の滑稽さ。生気も蝕まれ、ただただ光子を拝む日々。お互いの探り合い、疑い合い、まるでそれは結婚した当初のように、同じ気持ちに夫婦を結び付けていくのだ。それは抜けられない光子という沼。

岩尾文子と岸田京子のどこかわざとらしさまで感じさせる演技の熱感が本作には丁度よい。一歩間違えるとコメディに転んでしまいそうな絶妙なラインを行ったり来たりし、観客とかけ離れた世界のように見せながら、どこか共感できる部分を残してくれる。
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