こたつむり

バウンドのこたつむりのレビュー・感想・評価

バウンド(1996年製作の映画)
4.1
★ 石造りの海から自由になるために

冷たい風が吹く街で。
空が白々しくなる頃に眠りにつく彼女。
心が削られるたびに自由への欲求は高まった…。『マトリックス』のウォシャウスキー姉妹のデビュー作にして、サスペンス映画の傑作。

登場人物たちが魅力的な作品でした。
特筆すべきはジーナ・ガーション。短髪で作業着姿、男性下着を着用して雄々しい性格…と尖がっているのですが、アヒル口。うは。このギャップがたまりません。

また、そのお相手はジェニファー・ティリー。
掠れた声とふわっとした雰囲気が象徴するのは母性。“女”を武器にして生き残る逞しさはシビレるほどに格好良く。正直なところ、第一印象が悪かったので、好感度は高まる一方でした。

しかも、この二人の絡みは危ういのです。
当時は通念的に認められていない同性愛。
だから、結びつきも強く、そして儚く。
“信頼”という言葉を魂に刻むことが出来るのか…ギリギリの状況下で試されるのです。

また、彼女たちに対峙する男性陣も。
印象に残るキャラクタばかり。
ガサツで大雑把で頭の“どこか”が切れているのです。だから、最後まで緊張感が途切れません。物語終盤のキスシーンなんて白眉の極みですよ。男の“ある一面”を表した名場面だと思いました。

この筆致は、ウォシャウスキー姉妹ならでは。
当時は“兄弟”でしたが、今から思えば、自分たちのカラーを最初から出していたのですね。しかも、娯楽作品としても卓越。物語の骨格はありふれていても、気付けば前のめりになっているのです。

ただ、あえて難を言うならば。
もっとジーナ・ガーションの活躍場面が見たかったですね。物語の比重としてジェニファー・ティリーが高まるのは…ちょっと物足りなく感じました。

まあ、そんなわけで。
某漫画家さんのオススメということで鑑賞しましたが、もしかしたら某有名漫画第六部の主人公のモデルは彼女ではないのか(外見的には第五部のトリ…マフィアのボスの娘に近いのですが)…なんて妄想するくらいに格好良い作品。さり気なくオススメします。
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