ゆーさく

ジャージー・ボーイズのゆーさくのネタバレレビュー・内容・結末

ジャージー・ボーイズ(2014年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

往年の音楽グループ「フォーシーズンズ」の伝記的なミュージカル映画。
ブロードウェイの有名なミュージカル作品をクリント・イーストウッドが映画化。


イーストウッドがミュージカルって全然イメージ湧かないなぁ、と思ってたけど、観たら確かにイーストウッド監督だわ、って思った。


カメラワークは変に凝らず、最小限の動き。
テクニックに走らないで役者の演技をジーッと撮ってる感じ。
登場人物の誰かに必要以上に肩入れしたりもしないで、作中の出来事を客に公平に伝えてる。

そういうところ、イーストウッドっぽい。

とても誠実で印象が良い。


主役のうち3人は、ブロードウェイのオリジナルキャストの人がそのまま演じてるらしい。

歌も生歌を直接現場で録音してるので、上から乗っけたみたいな浮いた歌声じゃない。情感の伝わるライヴ感がたまらない。


オリジナルの舞台作品をそのままスクリーンの中に移し替える、という作業を丁寧に丁寧にやったって感じ。



突然唄い出したりするタイプのミュージカルじゃなくて、「バーレスク」とかと同じで、ショーとして見せてるシーンしか歌わないので、ミュージカル的演出に拒否反応がある人でも大丈夫なタイプの映画。


そもそもミュージカルって言うより音楽映画って呼ぶのかな、こういうの。


なんにしても、とにかく良かった、この映画。


フォーシーズンズの4人はみんな、それぞれに魅力的!

ニュージャージー出身の彼らは皆、馬鹿だけどまっすぐ。
自分の心に従って生きてる奴らばかり。
それが時たま、わがままに見えたり、愚かに見えたりするけれど、そういう風に生きられなくて後悔する人たちより、きっと彼らは幸せなんだろう。


第四の壁を破り観客に語りかけながら、4人のメンバーがそれぞれの視点でフォーシーズンズの顛末を話していく手法で物語は進む。


グループ名である"四季"を表すように、物語は、グループの誕生、成長、転落と崩壊そして再生を順繰りに描いていく。



グループ内にも格差があるのがリアル。
才能の有無っていうシビアな問題がグループ内でずっと付きまとう。
グループへの自分の貢献度が、そのままモチベーションに繋がる感覚もよくわかる。

そこに端を発するグループ解散のシーンで、


「アイツ(リーダーのトミー)はホテルで一緒の部屋に居る俺のタオルも全部自分のモノみたいに使う❗
俺がタオルを使う時は、アイツがグシャグシャにした濡れタオルの山から探さなきゃいけない❗10年間もそうしてきたんだ❗」

とキレるニックのシーンは、最高に共感。


品がないとか、乱暴だから、とか大きい枠の不満じゃなくて、


そういう小さな無神経が積っていって遂に堰を切って…って感じがリアルで良かった。
ニック役の人良い演技するなぁって思った。 


グループを抜けたニックの言い分、

「存在感の問題はあった。自分がリンゴスターなら家族と一緒に過ごした方が有意義だ」

なんていうリンゴスターファンぶちギレ必至のジョークも冴え渡ってる。



クライマックス、フランキーの歌うソロ「君の瞳に恋してる」のシーンは鉄板で泣ける。

カタルシスへの持って行き方がホント上手い。。。


本作唯一のミュージカルシーンであるカーテンコール替わりのラストダンスは、とても幸福で目頭熱くなる。


メンバーはもちろん、借金取りも、ギャングの親分も、別れた女房も、良い奴も悪い奴も、出演者一同、皆笑顔でステップ踏んで、決めポーズ。

これ以外考えられない終わりかた。
ゆーさく

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