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ジャージー・ボーイズのtakのレビュー・感想・評価

ジャージー・ボーイズ(2014年製作の映画)
4.0
 クリント・イーストウッドがブロードウェイミュージカルを映画化するなんて、誰が想像できただろう。骨太でハードな男のドラマを撮るイメージが強いイーストウッド監督だけに、ミュージカルは確かにカラーではないだろう。しかしだ。そもそもイーストウッド自身は音楽に執着のある人物。「ミスティック・リバー」や「チェンジリング」、「J・エドガー」などの近作では音楽を担当しているし、古くは「センチメンタル・アドベンチャー」でカントリーシンガー役を演じている(この時共演した息子カイルは現在ジャズミュージシャンとして活躍している)。そしてこの4人組コーラスグループの物語は、ニュージャージーの不良少年たちが音楽で成り上がっていくストーリー。理想を追う者もいれば、汚いまねをする者もいるし、才能に恵まれた者もいれば、その引き立て役でしかない者もいる。相容れない者たちのドラマは、まさにイーストウッドの得意とするところだ。実は格好の素材だったとも言える。

 週末に酒場で演奏する以外は、地元ギャングのボスにお世話になってるよな不良少年3人組。盗みで刑務所の出入りを繰り返すトミーとニック二人に対して、メインボーカルのフランキー・ヴァリは、ギャングのボスに「お前の声は神様の贈り物だ」と涙させる程の才能をもつ。3人はよりビッグになるために、当時ラジオでヒットを飛ばしていたボブをソングライターに起用しようとする。そして、メンバーと対等の関係を希望するボブを4人目のメンバーとして迎え、フォー・シーズンズと名乗ることになる。ハイトーンのファルセットが一度聴いたら忘れられない名曲「シェリー」の大ヒット。そして次々にヒットを飛ばす彼ら。上がる人気の一方で、トミーはツアーやショーを維持するために無理な金銭の工面をしていた。やがて、その借金が問題となり、メンバーは分裂状態に・・・。フランキーはその借金返済のために歌い続けることを決意する・・・。

 うまい演出でニヤリとさせる場面が多く、流れる音楽にも気分を高められて130分超の上映時間は退屈することはない。フランキー復活の大ヒット曲であるCan't Take My Eyes Off You(君の瞳に恋してる)を歌い始める場面は鳥肌もん。世代を超えて愛されているこの曲の持つ力を改めて感じてしまう。無名時代に教会に忍び込んで歌の練習をさせる場面の面白さや、イーストウッド主演のテレビ番組「ローハイド」がちょっと出てきたりで、わくわくしてしまう。映像と音楽が一体となった瞬間の感動は、これまで数々の映画で味わってきた。この映画のラスト、ロック殿堂入りの再結成ステージの場面は、音楽が高めてくれる気持ちと、紆余曲折を乗り越えてきた男たちの姿にこみあげてくるものまでが一緒になる。語るべき物語が世の中にはまだまだある、と力作を次々に発表するイーストウッド監督。今回は楽しんでいる余裕さえ感じるのである。素晴らしい。
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