黒田隆憲

ゴーン・ガールの黒田隆憲のネタバレレビュー・内容・結末

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

おそらく4回目。

お互いにとっての「理想の相手」を演じながら始まった恋愛が、関係を続けていくうちに次第に綻んでいく……というのはどこにでも、誰にでもある話ではないだろうか。そこで「演じること」に疲弊し、相手から逃げる人もいれば、何がなんでも関係を続けるために「演じ続ける」人もいて、ベン・アフレック演じるニックは前者を選び、ロザムンド・パイク演じるエイミーは後者を選んだ。それも夫婦間では〈本当に〉よくある話。ただしエイミーは、筋金入りのサイコパスだったっていう。

つまりこれは「幻想から始まった恋愛関係は、一体どういう結末を迎えるのか?」をエクストリームな形で描いたファンタジーであり、だからこそ「こんな奴いねえよ!」と思いながらも目が離せなくなるし、心底恐ろしく感じるのだと思う。

前半、ニックのクズ男っぷりから「こいつ犯人だと疑われても仕方ないだろう」「なんなら本当に犯人では?」と思わせておいて、実は全てエイミーが仕組んだ狂言殺人だと分かった時の爽快感。そして、メディアを利用してのニックの反撃や、彼の不倫相手アンディからの「文春砲」も絡みあっての後半の狂騒と、そこに繰り出されるエイミーによる会心の一撃の凄まじさ。トレント・レズナーとアッティカス・ロスによる素晴らしい音楽と相まって、何度観てもゾクゾクする。

登場人物全員が魅力的なのは、誰一人として「物語のコマ」のように使われていない脚本の素晴らしさによるところも大きいだろう。

最初に観た時はあまりの情報量に圧倒され、「女って怖いよね……」みたいなアホな感想しか持てなかったのだけど、二度、三度と観ていくうちにエイミーのサイコっぷりに痺れつつ、彼女に対するニックの仕打ちに憤慨していた。が、今回改めて観たら前述のように感じた次第。最も身近にいる相手が、最も理解できない「他者」であることの怖さを描いたこの映画、夫婦や恋人同士で観ちゃダメだと思います(笑)。
黒田隆憲

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