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天才スピヴェットのねこたすのレビュー・感想・評価

天才スピヴェット(2013年製作の映画)
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予告で抱いた印象と180°反対の映画だった。
まさかジュネにこんな感動的な話が作れるなんて。

物語序盤は主人公T.Sとその家族の説明がなされる。アメリカの田舎に住んでいること。双子の弟がいること。博物館の講演で、挑戦状を受ける。

いきなり姉が出てきて驚くのだが、何やらいつの間にやら天才的な少年になっている。そんな彼に、スミソニアンから受賞報告と講演依頼が届く! 
それでも学校や家族のことを気にしてどうやら踏み切れない様子。

父は昔ながらのカーボーイ。姉は都会に憧れる女優志望。母は昆虫学者でスピヴェットの理解者のようだが、どこかぎこちない。何やら不穏だ。
ここで初めて明らかになるのだが、双子の弟レイトンは銃の事後で亡くなっていた。

結局家族に講演の事を告げられず、一人で荷造りをし家出することを決意する。

一日数本しかない列車に忍び込み、大陸横断の旅に出た。
どうやら、この映画はロードムービーらしい。

大自然、農場、工場、小さい町。旅は続く。
その中で人との出会いがある。

停車場のおっちゃんは、ツバメのたとえ話をする。
ツバメは冬に暖かいところへ渡る。そして安全なマツの木を探す。この話に対して科学的に答えるスピヴェットだが、このお話が映画そのものを語っている。
冬はバラバラになってしまった家族を表し、暖かいところを目指し旅立つツバメはT.Sそのものだ。名前に鳥(スズメかツバメか失念してしまったが由来は確か)が付いているのもそうだ。
そして、先に言ってしまうと、マツは両親のことなのだ。
行って帰って来る映画の構造は、冬から春に変わった象徴だろうか。

ホットドッグ売りのおばちゃんはそれとなく気を遣うし、ブランコの女の子は印象的だ。

シカゴの警察もちょっと大人げない対応をするが、彼の危険を本気で心配する。
この場面で、厳選した荷物のコンパスや標本が壊れるが、これは一度T.Sを叩き落とす為だろう。英雄伝のようだ。

そして、トラックの運ちゃん。ちょっと強面だが、また味のある人だ。ハイカーを積極的に乗せ、記念に写真を撮っている。目的地のスミソニアンまで連れて行ってくれるのだ。

そして会員の前でついに講演をするのだが、ここで彼は始めて感情を吐露する。弟の死についてだ。
いくら事故だと言われていても、責任を感じずにはいられない。科学的なT.Sは原因と結果の因果を強く意識しているのだ。あの時自分がやろうと言い出さなければ……。

そして、その告白を母も聞いていたのだ。

スミソニアンにスターのように祭り上げられるT.Sだが、ここぞというところで両親が守ってくれる。

乗り越えるという意味では、なんだか「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」に似ている。

そして雰囲気の変わった家族と、希望が見えるラストにほっこりするのだった。