ふてい

天才スピヴェットのふていのネタバレレビュー・内容・結末

天才スピヴェット(2013年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

 モンタナの牧場で育った主人公TSは、カウボーイの父と昆虫博士の母、スターと都会に憧れる姉と暮らしている。TSには二卵性双生児の弟レイトンがいたが、一年前に亡くなっており、そのせいで家族はギクシャクしている。ある日、スキソニアン学術協会から、TSの発明が権威ある賞に選ばれたとの連絡を受けたTSは、貨物列車に飛び乗って一人で授賞式へ向かう。

 周りの人や環境とうまく馴染めない少年が、意を決して出発した授賞式への道のりの中で自分の感情に向き合っていくまでを描いている。一方で、家族の再生も描かれていて、旅を通して成長したTSが授賞式でそれまでぼやかされていた弟の死について語り、そしてそこから、父母が登場してTSを優しく包み込むテレビの収録のシーンに繋がる流れはとても美しいものになっている。

 旅の道中で出会う人達がユニークで可愛らしく、ジュネらしさが多分に感じられる。ブランコに逆さにぶら下がる女の子との数秒の邂逅の美しさ、TSを見逃すホットドッグ屋の店主の格好良さ、間抜けな警備員の可笑しさ、少し怖いトラックの運転手の優しさなど、どれも良いが、ドミニク・ピノン演じるおじさんがTSに語るツバメと松の木にまつわる挿話が特に印象的である。TSはその場ではあり得ない話だと突っぱねるが、その後に折に触れて松の木を口にしているのを見るに、かなり気に入ったのだと思う。頭は良いが感情表現が苦手なTSの特性が少し変化しつつある描写としてとても良い。

 ほとんどのシーンで面白いネタが仕込まれており、演出も外さない。完璧だと思う。特に好きなのは、テレビの収録でTSが、自分の発明を永久機関ではない、コストがかかる、などと否定的に述べたときの司会者の顰めっ面が好き。
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