OASIS

天才スピヴェットのOASISのレビュー・感想・評価

天才スピヴェット(2013年製作の映画)
3.2
モンタナ州の牧場に住む弱冠10歳の天才少年が、協会から与えられた化学賞の受賞スピーチの為、家族に内緒で家出をするという話。
監督は「アメリ」のジャン=ピエール・ジュネ。

監督自身初の3D作品との事。
2D版で観てしまったが、3D版だとより一層楽しめそうなギミックが満載だった。
絵本を開くメルヘンな始まり方から、スピヴェットが持つ細々とした小道具の豊かな色彩など、ウェス・アンダーソン監督などが好きな女子が「これ私好き!」と飛び付きそうな映画だった(偏見)。

少年が旅立つまでが結構長くて、彼と家族達のエピソードを丁寧に語っていくので序盤は少々退屈だった。
ただ、旅立ってからも何度か時間が巻き戻ってエピソードが挿まれるので、前半のゆったりとした語りのおかげで混乱せず観れたので細かい気配りが効いていると言える。

時代遅れのカウボーイの父、昆虫博士の母、アイドルを夢見る姉、そして事故によって亡くなった弟。
その中でスピヴェットが「永久運動機関」なる発明をしたのも偶然ではなく、欠けた歯車の一部となって行き場を無くした家族を一つにまとめるという役割を担っていたのだろう。

スピヴェット役のカイル・キャトレット君は、年齢に似合わぬ博識ぶりが鼻につくというよりかは弟によって失われた穴を必死に埋めようとする自責の念が優位に立っていたので絶妙に憎めないキャラクターだった。
彼の健気な滅私奉公ぶりは涙を誘う。

ヘレナ・カーターは「ローン・レンジャー」「レ・ミゼラブル」と残念な端役しか見られなかったので、久々に飛び出した今作の母親然とした演技には感動。
崩れたメイクでの泣き顔をさせたら彼女に敵う人はいないんじゃないだろうかと思った。

ユーモアたっぷりのドタバタ喜劇という感じでは無く、のんびりとした雰囲気で緩やかに人々の触れ合いを描くといった内容なので求めていた感じとは違ったが、少年の成長ものとしては無難に楽しめる作品であると思う。

父親がウイスキーを飲む角度や、作り笑いをした人々の目や口の筋肉を分析したりする演出のオシャレ感が若干鼻についたが、キャンピングカーで絵になりすます場面にはかなり笑わせてもらった。

@TOHOシネマズなんば
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