井出

天才スピヴェットの井出のネタバレレビュー・内容・結末

天才スピヴェット(2013年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

まさに飛び出す絵本。カラフルで、3Dの使い方は革新的だった。いろいろな監督が、2Dではなく3D、にする意味を探しているが、ゼログラビティと同様、3Dでなくてはならないともいうべき作品だった。
子どもが主人公だからというのもある。空間も時間軸も縦横無尽に駆け回り、空想や妄想と現実もしっちゃかめっちゃかで、しかし子どもにとってはそれこそがリアルな世界なのだと思った。カメラ位置もアニメなのかというくらい変わって、それがよりファンタジー感を強めた。色彩もやはりいい。
セリフも話もリズミカルで、テンポもちょうどいい。楽しかった。

中でももっともすごかったのは、弟が死んだのが分かるのは始まって少し経ってからだったが、冒頭からなんとなく、弟は死んでいるのではないかという気にさせられていたことだった。それは弟に関することの語り方だったり、弟の描き方だったりでそれとなく観る者に情報を与えているあたりたくみだった。弟を撮るときだけなんか違ったり、急に弟が出てこなくなったりしたからなのか、見返さないとわからない。

授賞式のとき、聞く人が科学の画期的な話より悲しい弟の話に感動していたのが人間らしくてよかったし、監督の考えが出ていた。未だに文系が残っている理由だと思った。最後、親子3人が帰っていく後ろ姿は、一貫して流れていた主人公の孤独感や虚無感、職員のウザさから一気に解放されてボロ泣いた。
井出

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