じゅぺ

天才スピヴェットのじゅぺのレビュー・感想・評価

天才スピヴェット(2013年製作の映画)
3.6
「アメリ」のジャン=ピエール・ジュネ監督最新作。大好きな弟を亡くしたスピヴェット少年の成長と、その家族の絆の物語です。モンタナの大自然からワシントンの高層ビル群まで、バリエーション豊かな表情をみせるアメリカの景色が楽しい。前半の鉄道の旅はロードムービーの趣きがあり、スピヴェット少年の目線に立って世紀の大冒険をしているようなドキドキ感、先の見えない不安感を味わえます。映像の色感も、原色を際立たせながらもケバケバしさのない、温かな印象を与えます。まるで家族の愛に包まれたこの映画自体を象徴しているかのようです。だから画面を眺めいるだけでも十分楽しい。
ストーリーの方ですが、意外に素直な展開でした。スピヴェットが冒険を通じて弟の死を乗り越えて家族の愛情の深さに気づき、家族の方もお互いの温かい気持ちを再認識するのですが、ほとんどトレイラーを観て想像した通りです。ある意味期待通りと言えますが、すこし物足りなさも感じてしまいました。あと、少年の目を通して描かれる大人の滑稽さに皮肉が効いていて面白い。とくにスミソニアンの次長やTVショーのスタッフなんかは酷いです笑
ついでに言うと、この物語、必ずしも家族愛だけを描いているわけではないようです。古き良きアメリカの生活スタイル、カウボーイ、それらと関係する銃の不始末による弟の死、都会の大人たちの金儲けに必死になる態度、などなど。まだ自分の中でしっかり整理できていないのですが、どうも「アメリカ」に対するシニカルな視線がこの映画には溢れているようでなりません。
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