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白鯨との闘いのJIZEのレビュー・感想・評価

白鯨との闘い(2015年製作の映画)
3.8
ハーマン・メルビルの名著「白鯨」を元に鯨油を求め大海原に繰り出す捕鯨船エセックス号の実際に遭遇した大海難事故を綴る生存率0%の航海譚!!結構ハード気味な船員をボコボコに追い込む系の航海物でしたね..特に終盤,餓死状態に陥り生(希望)死(闇)を彷徨うカニバリズムな非情を含む場面。あと視点の置き方次第では白鯨が善な主役を担い環境保全を訴え掛けるメタな社会派映画にも取れた。観終えた後は心地良い徒労感を持続。共に過酷な航海を乗り越えた達成感に似た。まず原題『In the Heart of the Sea』は直訳で"海の奥底"を指し要約で"復習する海"言わば白鯨orマッコウクジラを示唆させ同時に捕鯨を行う人間に対し大自然の逆襲を象徴したようにも読み取れた。そしてお話の構造,元の小説「白鯨」における現在迄隠され続けてきた未公表な真相部を抽出し新たに語り明かす設定。少し余談だが観終えて同じ航海物『ライフ・オブ・パイ(2013年)』を彷彿とさせ同時に終盤"ある場面"では『グリーン・インフェルノ(2015年)』も..両作品とも人間側が未知の海域"大自然の源"に足を踏み入れ神の逆鱗を被る話の骨格でも通底し合う共通項を感じる。問題提起でも巨大鯨(悪魔)と激戦し勝利(鯨油)をもぎ取る主眼(前半部)と生還を願い非情な漂流生活に身を託す人間ドラマ濃厚な副眼(後半部)の対比(起動)仕方も絶頂期な山場が物足りない点を除けば(最終的に)人間側が悔い改め成長を遂げる実直な構図を踏み重厚な実話に基づく史実物が好みな方は十分元が取れ凌ぎを削る"渾身の死闘物"だと思う。

白鯨の実在感(演出面)。
まず巨大鯨が船を目掛け攻撃を仕掛ける視点の撮り方が前代未聞な光景だなと(褒めてます)。観客に寒々しい恐怖概念を植え付け1度標的にされれば船が大破するまで執拗に執拗に追い続け半殺しにあう感じの映画内で体現した"凶悪な実在性"は評価に値した。体長30mで重さ約80トン,尾6m近くあり大理石のよう白い肌を放つマッコウクジラ(白鯨)が深海に潜み海中視点で小型船に狙いを定め次々に突進をカマし転覆させてく場面も(乗組員視点で観てる分に)悪寒以外の感情を発せない。おとぎ話のようなメルヘン演出を一切排除し,なんならホラー映画風に存在そのものを強靭な悪魔として際立たせる絶望感の魅せ方はこの映画の最大の武器にして主人公そのものだと言える。白鯨の全身に摩擦痕なような古傷が多数付けられ激しい戦歴を物語る細部の設定(背景)も演出的に見事でした。

概要。監督は『ビューティフル・マインド(2002年)』や『ダ・ヴィンチ・コード(2006年)』シリーズを手掛ける名匠ロン・ハワード監督。主演には『ブラック・ハット(2015年)』のクリス・ヘムズワーズ。共演には『リンカーン 悪魔の書(2012年)』のベンジャミン・ウォーカーや『007 スペクター(2015年)』のベン・ウィショー等豪華キャスト陣が集結。また主演クリス・ヘムズワーズはロン・ハワード監督との前作『ラッシュ/プライドと友情(2013年)』以来で2度目の共演作品を果たした。

「事実は小説よりも奇なり」という言葉があるよう(映画内の設定)19世紀の商業主義で捕鯨産業(時代背景)が町の基盤を担う窮屈な背景(影響)を通じ特に主役チェイスの家柄問題を皮切りにチェイスの生き様が否定され亀裂が走る(映画的な)軌道の乗せ方は前半と後半で(彼の心情を)対比させ的確な問題提起の配置だと思いました。(チェイス自身)捕鯨業の腕前は確かで過去にも記録的な量の鯨油を港に持ち帰る偉業を納めているにも関わらず,階級制度の影響で船長への昇格を見送られ地位を実力で勝ち得れず進路も選べない努力を真っ二つに否定される感じは(彼の)葛藤部分が垣間見え同時に仲間内による確執が生まれ整合性が取れない感じも映画の重要な柱を担う人間同士の闘いをデフォルメしたメッセージ部分に感じた。闘いの矛先が白鯨(前半部)から乗組員or己(後半部)に転換する構成も理に敵い的確な配され方だと思いましたね。

当時の社会背景の問題点。
要は捕鯨産業を主に鯨油産業で欧米諸国の基盤に灯をともし市民が自然を犠牲に生計を立てていた時代。当時は地面に穴を掘り原油を汲み上げる技術がなかったんですね。それ故に捕鯨船に乗る漁師たちが適当に消耗品扱いされ同時に(この映画は)人間側を崇高な闘う勇者として完璧に美化してない。その点が及第点の打ち所なのかと感じた。つまり兵士的な扱いで戦場(大海原)に繰り出す戦争映画の側面があるんだと。人間側(善)で大自然側(悪)の対立を元に。人間が自然の支配者として鯨は単に捕獲すべき資源の範囲に過ぎない位置関係が当時の西洋社会の背景を甦らせ本作で指摘できる部分だと感じましたね。人間=自然の共存関係を当時の社会背景では主流とせず調達物資など物目線で考えを浮かばせていた事が序盤20分程度で落とし込まれ商業主義な背景を込め読み取れる。

俳優面。
クリス・ヘムズワーズ演じるチェイスの肉体的にも精神的にもタフで航海知識も豊富な文武両道に秀でキャラ造形もクリヘム自身の自身に満ち溢れた俳優力であり野心的な親分肌を重々感じ取れる。この映画自体もクリヘム自身が監督のロン・ハワードに脚本を読ませ実際に頼み込んだという部分があり熱烈なオファーが叶い映画化に足を踏み切った作品みたいです。

エセックス号の難破前と難破後での内面的な対比も乗組員たちの心情の変化を示唆させ教訓を得るハイライトの1つに思えた。

総評。
重厚感ある力作!!という言葉が相応しい。冒険活劇のツボを押さえ尚更,目先に潜む想定外な難題が徐々にワンテンポ増しで乗組員たちに降り注ぎ,苦難の連続を同時に(メタ視点な)観客込みで乗り越え事態を果敢に突破していく航海物ならではの冒険過程に何より共有できる感動味があり鯨対人間より人間同士のサスペンス性も両方兼ね備える映画だった。つまり"想定内"の鯨油を求め鯨を捕獲し帰路に着く前半部(難破前)の目的と"想定外"の白鯨が襲来し途端に船が難破し酷にも漂流生活を余儀なれサバイバルという絶望的な課題を突き付けられる後半部(難破後)の目的,両者共に作品の分岐点を成す場面なだけにトーンを崩さず転調を機能させる巧みさは見事だと言える。構成面で現在軸の作家メルヴィル視点を先に取りニカーソンの壮絶な体験談を通じ時系列を遡り回想形式で回す演出も物語全体に腰を下ろす余地を十分与え過去軸1本で世界観を閉ざさない客観視できる配し方も的確に感じた。船酔い現象を懸念してる者は2D字幕を推奨。監視後も特別何かが残る作品!!ってワケではないんですが当たり前の概念を取っ払い,大自然に敬意を払い今後共に両者が歩むうえで意識的な部分を改心させ突き動かせる深い作品だと思いましたね。少なくとも前半部の自然界の脅威を示す荒波や白鯨の人間側に対する制裁場面は最高に乗組員視点で楽しめた!!極限状況で究極な決断を下す乗組員たちの闘志を劇場で是非!!