おくむらひ

インヒアレント・ヴァイスのおくむらひのレビュー・感想・評価

インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)
5.0
登場人物と氾濫と展開の連続による筋の読めなさは、60年代カウンターカルチャー、ヒッピーカルチャーに取り残されたドックの立場を語っている。
コーイは家族を再開し、アメックスカードでアメリカ的資本主義社会に生きていく。ミッキー・ウルフマンは左翼的な住宅提供のアイデアを捨て、不動産ビジネスに復帰。ビッグフットはTHE保守的な刑事像から、カラフルなシャツに着替え大麻を貪り食った。シャスタもドックとは結ばれていないだろう。60年代カウンターカルチャーの力が失われることで、登場人物に内面化された対立軸が溶解し、ドック以外は70年代に向かっていく。1960年代の終焉とそれに取り残される男の哀愁。
「内在する欠陥」とは、ネイティブ・アメリカンから土地を取り上げ再開発することであり、これから泥沼になってゆく麻薬戦争であり、ベトナム戦争へのトラウマ。オルタモントでもあり、ストーンウォールでもある。つまりアメリカ社会が抱える歪みそのもの。
70年代映画らしい音楽と照明の使い方、編集のテンポに、くだらないジョークを織り交ぜた会話劇。ポップな佇まいに欠陥を内在させる作りは、ハイコンテクスト過ぎて受け取りが難しいのも確かだ。
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