よねっきー

インヒアレント・ヴァイスのよねっきーのレビュー・感想・評価

インヒアレント・ヴァイス(2014年製作の映画)
4.6
この軽妙で眩暈のする雰囲気はこの監督にしか出せない技ですよね。画面が飄々としてる、というか。

全編に渡って情報量の嵐な私立探偵モノ。そう聞くと「なんか巧妙な推理が繰り広げられるんだろうな」と思う人が多いと思うんだけど、そんなことはないです。主人公は僕ら観客よろしく、膨大な情報に振り回されるのみだ。
そして情報量に反して事件の全貌が明らかになることはない。元カノの依頼に奔走する主人公は、捜査すればするほど深みにハマっていき、お話が何かデカくなっていき、デカくなりすぎて収集がつかなくなり、情報量が多い割に分からないことだらけのまま終わるのです。アメリカを暗躍する組織の存在が見え隠れして、おしまい。

ストーリーを楽しむっていうより、この雰囲気を楽しむんでいいと思う。主人公がずっと(本当にずっと)ハッパ吸ってるからどことなくトレインスポッティングを彷彿とさせる。捜査もフワフワしてるし主人公もそんなんだから画面がずっとハイ。酩酊感とも陶酔感ともいえる独特な雰囲気が素敵っす。
そして謎のセンスがいいね。寿司屋の職人みたいなのがパンケーキ出してる店はなんなの。ところどころハハ、って笑いながら観るお洒落な映画っすね。モジャモジャしてるけどセクシーなホアキンが最高。相変わらずバチッと決まってるPTAらしい画面も最高。それでいて明らかに寄りの画面が多くて70sな映画っぽくなってるのも最高。この監督のセンスはマジで底なし。
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