武倉悠樹

ジャッジ 裁かれる判事の武倉悠樹のレビュー・感想・評価

ジャッジ 裁かれる判事(2014年製作の映画)
3.0
 トニー・スタークは裁判もこなすのかぁ、とか終始考えながら見ていた。さておき。

 先に見た「プライマル・フェア」に続き、法廷ミステリに見せかけた作品。いや、別に、親子の絆の物語が駄目ってんじゃないけど、なんで法廷ミステリに見せかけるんだよ。そう言う方向を期待すんじゃないかよ。

 ふむ、こじらせた親子の物語なのであれば、そう観ようと、姿勢を正してみるが、今度は、そりゃこじらせるわと言う頑固で偏屈な親父と、傲岸で狭量な息子の像が見えてくる。まぁ、狭い人間関係において、拗れる時なんて、どっちがどう悪いと言う物でもなく、また、それが解消されていく時と言うのも、何か一つの分かりやすい決め手があってと言う事でもないと言ってしまえばそれまでだが。

 一番気になったのは、親父の振る舞いだな。息子に厳しく当たったのも「厳格」ゆえ、と言うには自己中心的過ぎる振る舞いで、闘病の為とは言え、意識や記憶に支障を来す様な薬を服薬しながら判事の席に座り続け人を裁き続けると言うのは、ちょっといかがなものか。少なくとも観る者の感情移入をはねのける行為だと思う。
 しかも、治療行為を隠し、周囲にも「これまでの裁判の信憑性が失われるから誰にも言うな」と言う自覚まであると来てる。ないわ。

 息子の、金に媚びた弁護士としての立ち居振る舞いに反感を示しておきながら、自分は一貫して、法に殉じるんだか、倫理に殉じるんだか良くわからない行動をふらふら。潔く、自分が殺したんだと思うが、事件当時の記憶は無いと自首すりゃいいんだ。

 親と子の物語よりも、過去を背負い、異なる今を歩く、兄弟の物語にフォーカスした方がよっぽど面白かったかもしれない。
武倉悠樹

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