OASIS

コードネーム U.N.C.L.E.のOASISのネタバレレビュー・内容・結末

コードネーム U.N.C.L.E.(2014年製作の映画)
2.4

このレビューはネタバレを含みます

1960年代のイギリスのTVシリーズ「0011 ナポレオン・ソロ」を映画化したスパイアクション。
監督は「スナッチ」等のガイ・リッチー。

映画にとって音楽というものが如何に重要であるかを再認識させる作品だった。
本作はやかましいくらいに音楽が鳴り止まない映画で、それが良い方向にも悪い方向にも作用していると思った。
良い面としては、テンポを早く感じさせたり状況や心情の変化を分かり易く演出して見せたりする部分。
そして悪い面としては、結果的に「音楽が良かったね」という風に映画を観終わっても音楽しか印象に残らず、アクションやドラマ部分といった場面場面の印象が薄くなってしまう点。
本作はどちらかと言えば後者で、良くも悪くも音楽がオシャンティだった事しか覚えていない、そんな感想を抱いてしまった。

ウランを使った核兵器とその濃縮技術を用いて世界の破滅を目論む国際的な犯罪組織の陰謀を阻止する任務を与えられたCIAの工作員ナポレオンとKGBの工作員イリヤ。
その二人が、科学者の娘であるギャビーを護衛する為に手を組むという流れ。
最初は反りが合わず仲違いを繰り返す二人が任務中に相棒として関係を深めていくというバディものとしての面白さはあるものの、それが映画の結構な後半まで引き延ばされていて、前半〜中盤まではナポレオンだけにソロプレイばかりが目立っていた印象(これが言いたかっただけ)。
掴みのカーチェイスシーンが最高潮で、それ以降は大した見せ場も無くテンションがダダ下がりになって行った。
舞台が主にイタリアはローマのみという部分も、その限定された空間でいかに映画を引き延ばすかに終始してしまい、結果的にスパイ映画なのに世界が物凄く狭く感じてしまう理由だった。
スパイガジェットも時代背景的にアナログなものが使われ「NASAは宇宙の無重力でも書けるボールペンを開発した、一方ロシアは鉛筆を使った」みたいなお互いの国民性を揶揄するノリが続きそれもたしつこい。

もちろん、スパイ映画に付き物な腹の探り合いや裏切り等の展開もあり、観ていて「ほぉ〜」と思ってしまう部分もあって普通に楽しめる。
ただ、それまでの過程で出される情報が少な過ぎて、それをまだ飲み込めていない状態で無理矢理吐き出させるような忙しなさがなんだか気持ち良くない。
一つの台詞でパッと画面に提示された物が、次の場面では「実はこうでした」とさも前から伏線を張ってましたよと言わんばかりに堂々と前に出て来られても「いや、こちとらその情報知らないし」と常に先を越されてる感がしてやけにムカついて来る。
実際は先を行っているというよりも、一瞬目の前から姿を消したかと思えば数キロ先まで瞬間移動しているような汚さを感じるやり方なのだが。
そのノリが終盤何度も繰り返されるのでもうクドくてクドくて。
一旦終着したはずなのにエピローグ何個あるんだよ、とあまりのしつこさに早く終われとすら思ってしまった。

ガイ・リッチーと言えば、キャラクター同士の軽妙洒脱なやりとりや、細かいカット割りで多数のキャラクターを忙しなく動かす群像劇の名手というようなイメージがあるが、今回はその手法が裏目に出ていると感じた。
そして、時代背景と合わせたのか分からないがそのセンスまでも前時代的なものに退化しているのでは?とも思った。
「シャーロック・ホームズ」ではロバート・ダウニーJr.とジュード・ロウをホモ達風な関係性で描き日本のみならず海外の腐った乙女達の目を潤した彼も、今回はその男同士の友情を超えた濃密なナニカな部分も薄く、しかもどちらのキャラクターもイケメンだが女受けはしなさそうな性格であり、男から見ても好きにはなれない二人だった。
というか二人のキャラクターが描き分けれているようで微妙に被ってないか?とも思ったり。

そして、アクションも盛り上がる部分を意図的に排しているのか「ミッション・インポッシブル」シリーズや「007シリーズ」に見られるような荒唐無稽だが斬新なシーンが全く無く、特に新しさも無いカーチェイスしか見せ場が無いのもどうなのかとも思った。
終盤のスクリーン5分割で見せる突入場面とか、もっと見せ方が上手ければ十分盛り上がる場面だったと思うのだが。
「ガラスの部屋」をバックに一人が必死に逃げ惑う場面や、電気椅子で拷問される博士をバックに二人が言い合いする場面の、今の時代にそれで笑わそうとするセンスはヤバイだろうという見事な滑りっぷりは観てられないレベルだった。

「ミッション・インポッシブル:ローグネイション」や「キングスマン」といった快作が続きスパイものの当たり年だと思っていた2015年において、このクオリティではそれらに水をあけられるのも無理は無いだろうと思う。
長年ガイ・リッチー組であったマシュー・ヴォーンに、クオリティ面でも興行面でも完全に追い抜かされた形になったガイ・リッチー。
どうして差がついたのか・・・慢心、環境の違い。