マリオン

コードネーム U.N.C.L.E.のマリオンのネタバレレビュー・内容・結末

コードネーム U.N.C.L.E.(2014年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

アメリカの諜報機関CIAに所属するナポレオン・ソロとソ連の諜報機関KGBに所属するイリヤ・クリヤキンという敵国同士のエージェントが、アメリカとソ連を脅かす謎の組織の壊滅のために奮闘するテレビドラマ「0011 ナポレオン・ソロ」を映画化。ガイ・リッチーらしいスタイリッシュでスマートなセンスと演出でコーティングされたオシャレなスパイ映画は見ているだけで幸せな気分にさせ、個々のキャラクター達がとても魅力的に映える。だがこのオシャレさはキャラクター達のケミストリーが生かされない盛り上がりに欠ける展開の退屈さまではカバーしてくれない。

やはり目を引くのは全編に渡って貫き通された60年代らしい時代背景とオシャレさだろうか。冷戦下にあるアメリカとソ連の緊張感がもたらす危険な匂いがスパイたちをイキイキさせ、美女たちは魅惑的な色気を振りまく。そんなスパイと美女たちがベルリンでのカーチェイスに、ローマでの諜報活動、裏切りからの拷問、悪の組織が根城にしている地中海に浮かんでいると思われる謎の島での攻防戦を華麗に繰り広げるわけだ…こんなに危険で上品なスパイの世界にワクワクしない観客はいないだろう。そんな世界を彩るのは色彩豊かな美しいドレスに、かっこいスーツ、レトロなヴィンテージカー、まだまだ大きくて分かりやすい盗聴器、ローマの美しい街並み、豪華絢爛なホテルなど古き良きヨーロッパの美しさと60年代カルチャーだ。あまり60年代カルチャーや世界情勢に造詣が深くない自分でも、一つ一つのこだわりに触れようとするとかなり膨大な数になりそうなほどこだわり抜かれているのが分かる。そんな細かいこだわりを持って描かれる60年代の世界のなんとオシャレなことか…若干レトロな雰囲気の暗さを持つ映像も相まって思わずうっとりだ。

でも普通にレトロでオシャレな世界観を見せるだけでは面白くないとガイ・リッチーはスタイリッシュなセンス全開で、現代的に60年代スパイ映画を復活させようとする。赤と黒を基調としたカラーリングで冷戦下のアメリカとソ連の情勢を当時の新聞記事やニュースなどをモチーフに作られたモンタージュ映像でスタイリッシュに見せるオープニングクレジットから始まり、テンポのよいカット割りとズームによるシャープさ、事態を同時進行で魅せるスプリットスクリーンもテンポ感が最高にキレッキレで見ていて心地よい。レトロ感溢れる黄色い字幕など細かい演出までオシャレに気を遣い、エンディングも今回の活躍で結成することになったU.N.C.L.Eのメンバーを書類や写真によるモンタージュ映像でオシャレに終わる…最後の最後までオシャレでスタイリッシュだ。あとテンポ感で言えばダニエル・ペンバートンの陽気でどこか懐かしいスコアも映画のテンポ感と最高にシンクロしていて、耳に残るキャッチーさも魅力的だ。かすれたフルートの音色やかっこよくかき鳴らされるギター、ツィンバリムやハープシコードの独特な音色、パーカッション部分のバラエティ豊かさとテンポ感など最高に味わい深くて渋い。楽曲のセンスもこだわりが感じられるのでサントラはおススメだ。

だがこだわり抜かれたオシャレな60年代とは裏腹に、キャラクター達の物語は全然ハジけてこない。かつては世界中を股にかけた大泥棒で、金庫破りや盗みのテクニックも超一流で語学も堪能だけど、ギャンブルと女が大好きなお調子者であるCIAエージェントのナポレオン・ソロと高官だった父が失脚してしまい、その汚名を返上するために努力と訓練を重ねて組織一番のスパイになったものの、純情で怒りっぽいのが欠点であるKGBエージェントのイリヤ・クリヤキンという敵国同士のスパイが手を組んでヴィクトリア・ヴィンチグエラという女性がリーダーを務める国際的犯罪組織の撲滅に挑む…この設定を聞いただけで波乱が起きそうだなと思うだろう。序盤のベルリンでのソロVSイリヤの逃走劇や、コンビ結成初日には「あの時の憎き敵だ!」と言わんばかりにもみくちゃの格闘を始めたかと思えば、お互いに自分のトラウマを言い当てられてイリヤは激怒してしまうなどさっそくその波乱ぶりを披露してくれる。だがそんな波乱ぶりは序盤だけで中盤以降はキャラクター個人での面白味が生きるシーンはあるものの、スパイの矜持が邪魔をするのかバディものの魅力やブロマンスとしての面白味が半減し消化不良に感じられる。バディものとしてはお互いに任務上助け合ったりするものの、あんなに仲が悪かったのになぜ結束するのかという過程はすっぽかされてなんだかんだ任務を成功させたようにしか見えず、最終的にU.N.C.L.E.が結成されるというカタルシスに乏しくなる。一方ブロマンスとしては仲の悪さを表す場面では軽い憎まれ口で留められ、息の合った友情を示すような場面も希薄で、せっかく任務完了時に新型核弾頭のデータを巡って相手を殺すか殺さないかのスリリングなシーンからのソロがイリヤの大切な時計を渡すという展開もあるのに全て台無しだ。

また主役二人だけでなく他の主要キャラクター達の魅力も惹き出せていない。国際犯罪組織で新型核弾頭を作っている天才科学者の娘であるヒロインのギャビーは純情なイリヤとのラブロマンスに発展するものの、実はイギリスのスパイでしたというオチで、主役二人に助けるために裏切ったという説明が加えられる。別に裏切りはスパイ映画ではお馴染みなので構わないのだが、結局無駄に事態をかき回しただけの邪魔な女にしか見えないというのはやはり見せ方が下手だし、いきなり酒飲んで悪酔いして絡むというクセも急すぎて見せ方として下手だ。ガイ・リッチーといえば「シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム」でもナオミ・ラパス演じる事件のカギを握るヒロインの存在感が希薄だったが、ヒロインを上手に惹き立てるのがもしかしたら下手なのかもしれない。他にも後にU.N.C.L.E.のリーダーとなるイギリス諜報部のウェーバリーもあまり大きく物語に関わっているように見えないし、悪役のヴィクトリアも個性的なキャラクターとしてのポテンシャルを秘めておきながら大して活躍しない…はっきり言ってこの映画、キャラクターの魅力の半分も生かせていないと思う。そんな魅力半減のキャラクター達による「後ろでは深刻な状況なのに気付いていない」というギャグも薄ら寒いものとなり、キャラクター達への思い入れも薄くなってしまう。

そしてアクション部分も序盤のカーチェイスと逃亡劇をピークとしてあまり盛り上がらない展開の連続で退屈だ。基本的にアクションは何かから逃げるか追いかけるかの2つしかなく、面白くなりそうな謎の組織が根城にする島への突入シーンもスプリットスクリーンであっさり流されてしまう。また主役二人にとって圧倒的な脅威となる存在が乏しいので、アクションとしてのハラハラに欠ける。ただでさえ魅力のないキャラクター描写で間延びしているのに、ハラハラの少ないアクションで更にその退屈な時間を長引かせる。また「シャーロック・ホームズ」でも使われていた伏線となるシーンをフラッシュバックで見せるという演出も、多用されすぎて物語が有耶無耶になるし、ヴィクトリアを倒す最後の展開も後出しジャンケンを見せられているようで、物語を真剣に見る気が失せてくる。そもそも「シャーロック・ホームズ」における伏線となるシーンをフラッシュバックで見せるという演出はシャーロック・ホームズという天才が導いた推理を一般人であるジョン・ワトソン(=観客)に説明するという意味合いがあったが、今作にはそういった意味合いというのがない…アッと驚く展開にしたくて、しかもスタイリッシュっぽくなるから使っただけという投げやり仕事のように見える。

それでも役者陣の魅力はこの映画の退屈さを多少癒してくれる。ナポレオン・ソロ役のヘンリー・カヴィルは思っていた以上にスーツが似合い、あのキレのある佇まいに惚れ惚れする。イリヤ・クリヤキン役のアーミー・ハマーもその長身を生かして無骨でピュアな男を熱演している。ギャビー役のアリシア・ヴィキャンデルのハスキーな声質が印象的で町工場の娘からきらびやかなファッションに身を包む大人の女性への転身も見事でまるで着せ替え人形のようだ。ヴィクトリア役のエリザベス・デビッキはキリッとした視線が女王様のようで自分の中に眠るMっ気をくすぐられる。ウェーバリー役のヒュー・グラントは渋さ全開でベテランな男の色気を見せつける。こんなにも魅力的な役者陣の好演が無駄になっているのが勿体ない…。

オシャレにスタイリッシュに作りこもうとするその心意気はとても素晴らしいことだと思うが、根幹となる物語やキャラクター、演出をおざなりにしては元も子もないということを改めて感じる1本だ。あまり言いたくないけど、今作でガイ・リッチーの限界を見たかもしれない…果たして次回作ではまた復活してくれるのだろうか?

~ガイ・リッチー流、オシャレ絶対至上主義スパイ活劇~「コードネーム U.N.C.L.E.」ネタバレレビューhttp://marion-eigazuke.hatenablog.com/entry/2015/11/21/170852