星の王子様の原作は、絵が素敵で前々から読みたかった作品。でも哲学的で教訓めいていて、どこかとっつきにくさを感じていました。
だからこのオマージュ作品の映画で、映像として観ることができてとても良かった。
何よりペーパークラフトのストップモーションアニメが、最高の出来!息をのむ仕上がり。
キツネのしなやかな毛並み(とくにしっぽ)や、星の王子様の繊細なフォルムに目を奪われました。
物語うんぬんより、コレを観られただけで満足してしまうくらいに良かった。
星の王子様の子ども時代の声は、素晴らし過ぎました。
特に笑い声は、幸せのかたまり!
ずっと聞いていたくなります。
人生設計を立て規則正しく暮らす大人達。
これでもかと言うくらい機械的に描かれていますが…
それが決して悪いことだとは思いません。
(ていたらくな私にはやろうと思っても絶対できない暮らしぶり…)
大人になると未来の為に備えることが上手になります。
先を見越して行動することで、避けられる危険もあるし、そうやって子どもを守ったり、幸せな方へ導けるのも大人。
社会の歯車がこうしてなんとか回っているのも、今日もどこかで誰かが頑張っているから。
みんながみんな、自分を解放して仕事を放り出し、遊びに行ってしまったら大変。世界は成り立たない。それはすごくわかる。
ただ、だからと言って生産性だけを考えて行動し、楽しむこと、感じることを後回しにし続けるのは違う。
危険なのは、初めはそれが何か大切なことのための犠牲だったとしても、長い間 感情を無視したり押し殺していると、本当に自分がしたかったこと、大切なことが何だったか忘れてしまうかもしれないということです。
犠牲を払うこと自体が目的やルールになってしまっては、本末転倒。
成功してどうなりたいのか。
お金を稼いで何に使いたいのか。
我慢して努力して手に入れたい物は一体なんなのか…
他人の幸せを決めつけるのはよくない。
それが我が子だったとしても。
何に価値を見出すのかは人それぞれ、わからないのだから…
子どもが何かに関心を持ったら、それがたとえ自分にとってはくだらないものであっても 気にかけられる人でありたいです。
機械的に生きる人々の中で、オンボロのユニークな家に住むおじいさん。
落ちてくるパラシュートに2人が包まれるシーンは、女の子同様 張り詰めていた気持ちが和んでホッとしました。
遊び心のあるおじいさんがとても魅力的。
とは言え、運転免許証を持っていたら…車をきちんと整備していたら…蝶々に見惚れなかったら…。
おじいさんが少しばかり大人らしい面も持ち合わせていれば、パンケーキ屋さんで食事する2人+1匹が見れたかも…と少し残念になったり。笑
プロペラで、お隣の家を破壊して何食わぬ顔でいるところなんかは本当に子どもっぽいですし、何事もバランスだな〜と思いました。
大人の顔と、子どもの顔、いろんな面を持ち合わせ、それを使い分けることができればきっともっと楽しい。
女の子は将来きっとそんな大人になっているはず。
星の王子様のその後…大人になった姿が描かれていたのも好感が持てました。
儚く脆く尊い存在の子どもから、どこにでもいるような社会の歯車になろうと必死だけど、なかなかうまくいかない大人に…。
これは現実です。どんなに素敵な子ども時代を過ごしたとしても、大人になれば慌ただしい日々の仕事に追われ、悶々としている人はたくさんいるでしょう。
でもきっと大丈夫。
王子様のように 子どもの頃、一番輝いていた頃を思い返すことで、自分の気持ちと向き合って、大切なものを見つめなおすことは可能だと思います。
今晩、楽しかった子ども時代のアルバムを、開いてみようかなという気になりました。
最後に…
キツネの可愛さといったら…!
ぬいぐるみバージョンも、ペーパークラフトバージョンもどちらも最高。
「まだ懐いてないから」というセリフが、なんとも絶妙で頭から離れません。
ふわふわの足で、靴を踏みつけるシーンは可愛すぎて悶えました。全然痛くないよ〜