ベティー

プロミスト・ランドのベティーのレビュー・感想・評価

プロミスト・ランド(2012年製作の映画)
4.0
シェールガスを取り扱う企業の事業展開を進める営業さんの話。
シェールガスはようするに石油的な燃料ですね。数年前に話題に上った記憶はあるのですが。。視聴後すこしぐぐったところによると、こんな感じでした。
・シェール層という地層から取れる天然ガス
・2013年ごろに抽出技術が確立されたため話題となった
・全埋蔵量の4割がアメリカに存在する
・アメリカは2025年頃にはこれによって世界最大のエネルギー生産国となるみこみらしい

すごいですね。シェールガス革命という言葉があるようですが、わかる気がしました。ちなみに日本は全然だめっぽいですね。。地層大事。

主人公ですが、シェールガスで躍進する企業に勤務しており、土地の地主と採掘権契約を結ぶのが仕事。
いわゆる営業さんですね。口がうまいです。契約を獲得するために淡々と必要な仕事をこなしていく姿は地味でなかなかよいです。しかも営業的スタイルがアメリカ的というか、軽くジョークを入れていくスタイルは日本の営業マンのような誠実実直を全面に押し出すイメージ(あくまイメージですが)とは対照的な感があり興味深い。私デスクワークしか経験がないのでこういうの新鮮です。
主人公は与えられた仕事という役割を効率よく進めて企業からいかに評価されるか、ということをゲーム的に楽しめるタイプの人間で、社畜とも揶揄されそうですが、これはこれで会社、本人ともに相互補完というかいわゆるwinwin的バランスの取れている幸せな労働者なんですね。職種は違いますがかつての自分にもそういう時期があったので、すごくわかるという共感がありました。
ストーリー的には、企業と地主、元学者などそれぞれの視点や価値観、採掘事業の環境への影響などがまざりあう様は一見焦点が見えずらいけれどなかなか現実感があり、地味だがおもしろい。

過疎化していく田舎で搾取され続ける地主たちに降ってわいたシェールガスの採掘話。それは地方を再生し、かつ富裕層へ転身するための切り札なのか。それとも先祖から受けついた土地を採掘で使用する化学物質で汚染してしまう人生最大の過ちとなるのか。極めて難しい選択をせまられている人々の話ですね。のわりにあんまり緊張感がでていないけど実際はこんなもんか。

主人公は本質的には、仕事という枠組みにとらわれず物事の有り様を考えられる姿勢でとても好感がもてました。仕事なんて結局、だれかが金をだしてもいいと思ったこと、くらいしか定義できないだろうし、だれもが仕事だからと妥協することで社会全体が悪くなっていくことって、知らないけど実際に起こっていることだと思う。でも、同時に個人としてはとても危険な思考ですね。。仕事の価値観と個人としての価値観は一致しないことは多々あるわけで、問題は、その妥協点をどこにもってくるかなんだろうなあなんて考えてしまいますね。
人には企業の価値観とは別で個人としての価値観を持っておく必要があると思うし、不意にどうしても許せないポイントに立ってしまったときに決断すべきか、耐えるべきなのかというのはとても難しい話だな。正解は人それぞれの状況によって違うんだろうし。
とりあえず、同僚の女性のように家族がいるとぶれにくいかも。「ただの仕事よ」というのは仕事以外に大切なものがあるから言えることなんでしょうね。
それにしても環境保護団体の男の存在がかなり心に残った。こういった人、いますね...そして知らず知らずのうちに自分も彼のような存在に意思をコントロールされているのではないかという恐ろしさがありました。
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