ねこたす

プロミスト・ランドのねこたすのレビュー・感想・評価

プロミスト・ランド(2012年製作の映画)
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監督ガス・ヴァン・サント、主演・脚本マット・デイモンというとグッド・ウィル・ハンティングでお馴染みのコンビ。こっちまだ見ていないので、偉そうなことは何も言えないけど。

震災の後、アメリカでは安いシェールガスが注目されていた。そして、その採掘で環境汚染が進んでいる、なんて話があったなあと映画を見ながらしみじみ思い返す。

90億ドル規模の巨大エネルギー会社"グローバル"に務めるスティーヴ。会社名からして皮肉が大盛りだ。田舎の採掘権を買うために、その手腕を買われて派遣される。
OPの空撮がまた良い。一本筋の道路を進む車と、広大な農場。いかにもアメリカという感じ。
到着早々、同僚のスー(ファーゴの刑事おばさん)と準備に取り掛かる。車、服などを戦略的に揃える。あくまでも仕事の為の買い物だ。まさしく田中角栄の田んぼ作戦のよう。

「あなたはラッキーですね~、地下に資源が埋まってますよ~。大儲けだ!」とお得意のビジネストークで権利を買い取っていく。確かに相手に儲けを提供するが、おそらくは自分たちはそれ以上に儲けるはず。
しかし、昔と違って田舎者も馬鹿じゃない。Google先生に聞けばなんでも教えてくれるのだ。仕事がやりにくいだろう。
しかも、活動家顔負けの高校教師まで登場する。MIT卒、ボーイングで30年勤務で、田舎で教師やるなんてどんな趣味だ!まったく。

そこに正義感あふれる環境保護活動家までやってくるのだから大変。一気に苦境に立たされる。そして本音が出る。「このファッキューマニーを掴まなきゃお前ら全員死ぬね!」
聞かされた方はたまったもんじゃないが、それもある意味耳の痛い正論なのだ。

ロビー合戦はいくところまでいき、お祭りで起死回生の一発をはかろうとする。(なんか東京ガスがよくやっているような巨大版。世界的にエネルギー会社はああいうことをよくやるのか?)

文字通り暗雲立ち込め、敗北宣言。しかし、そんな地獄に一本の蜘蛛の糸が……。


1回目の住民説明会でかなり厳しい答弁をするスティーヴだが、彼なりに嘘はつかないようにしていた。100%安全なんて言わない。会社だって隠していることはないはず…。
ここで体育館の星条旗を背後に配置するいやらしさといったらない。さすがガス・ヴァン・サント。

配置が入れ替わるのもしょうがない。大企業がいかにも取りそうな戦略だが、嘘はよくない。自分はなんのために働いていたのだろう、不審ばかりつのる。

少女はレモネードを売る。アメリカ人はガレージレモネードを売ることで、商売を学ぶ。25セントのレモネードに対し、スティーヴはお釣りはいらないと言う。
しかし、これは25セントの商品と譲らない。
嘘はついていないし、そもそも必要以上に儲ける気がないのだ。

確かに批判的な視点はあるが、別に環境保護をうたった映画ではない。結局住民が選ぶのは現状維持だ。何も変わっていない。結局は苦しくなり、将来的にエネルギー採掘に手を出すかもしれない。
それでも、嘘の情報による選択だけは取らなかった。スティーヴの決断によって。その部分だけは、彼らは救われたのではないだろうか。

儲けるだけ儲けようとすれば、嘘をついていくものだ。

そういえば、シェールが採掘できれば中東にわざわざ戦争に行く必要がない、なんて台詞があったね。イラク戦争も嘘で始められたんだっけか。嘘はよくない。