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フランシス・ハの教授のレビュー・感想・評価

フランシス・ハ(2012年製作の映画)
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インディー映画に「ありがち」な青春映画。ありがちな比較的どうでもいい日常をダラダラオフビートに見せていくこれまでに何百回も繰り返されてきたジャームッシュ的な映画。

しかしながら。若さそのものが特権で。
この時代、この若さが記録され、空気のようなものがしっかりと映し出されてしまった時には、やっぱり面白い映画になってしまう。

僕としては一回りしたの世代の「オルタナ」な青春を、焦燥感を、自分探しを。
「モノクロ」に少し色味が加わった画質で、とっても落ち着いて描いてみせる。

所謂、粗雑なインディーズ映画とは比べものにならない俳優たちの演技的実力。
グレタ・ガーウィグが映画の冒頭からラストでは見事に主人公の成長を表現しているし、今をときめくアダム・ドライバーは当時から初々しさよりもある程度の円熟が既に見て取れる。

人生の経験値としては未熟であったとしても、やはり、現代を捉えようと、映画全体が作家主義的、表現主義的に「マンブルコア」映画という作劇を追及している姿に感動する。

しばしば技術論以上に「情熱」という不確定のものが重視される傾向がある気がするが、本作はまるで逆。
基本的には「何も起こらない」話を、それこそ「ありがちな話」を作劇をロジカルな思想に基づいて表現しようとする「姿勢」と技術に対しての「明快さ」が痛快だった。

「物語」をきちんと語ろう、という姿勢のある作品が好きだ。
何も起こらない話、のようでいて、映画を雄弁に語ろうという意志を、確信犯として制作していて。
それが楽しい作品になっていて嬉しい気持ちになる。
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