やっぱりこの映画は私のバイブルなんだと思う。
近くのATMはどこも閉まっているから「大人は判ってくれない」にのせて遠くまで走る。クリスマス公演が決まった夜に嬉しさを爆発させながら「モダンラブ」のかかる道でジャンプをする。
ああ今こうやって映画館で観ているんだと胸に手を当てると、たまらなく嬉しくて涙が出た。
昨年11月に2日続けて虜になった「フランシス・ハ」。
その時はまだ中学時代からの友人と連絡を絶っていた。
だから自分の寂しさをフランシスに投影せずにはいられなかったし、とても切なかった。
親友ソフィーとやっていた遊びを他の誰かに付き合ってもらって、それでなんとか孤独を埋めようとするフランシスの気持ちがものすごくよく分かる。だからなおさら辛かった。
2月に手紙を出して、3年ぶりに会うことになった。
今まで思っていたことを伝えていると涙が止まらなくなったけれど、あのまま疎遠にならなくて本当に良かったと噛みしめている。
フランシスが母校の寮でソフィーと過ごした夜、あの喜びを私も感じた気がした。
「よく『自分中心だった私が今では子ども中心!』っていうけど、子どもはあなたの一部だから!子どもはあなたのミニチュア版なの!」と正論を言ったおかげで夕食会はギクシャクする。
自分が一番分かっていると思っていた親友の近況は、今日初めて会った人たちの方がよく知っていた。
それでも夕食会の最後、人生において大切にしている瞬間について話す彼女は、自分自身に根気強くて諦めてなくて、だからこんなに魅力的なんだと思う。
友だちにかっこつけて嘘ついちゃうのも、プライドが許さなくて仕事を断っちゃうのも、全部無駄じゃない。
泥酔したソフィーに「仰向けになって床に片足をつけてみて」ってベンジーが教えてくれたことを今度はフランシスが教えてあげる。
新居のドアの狭いところからリビングに出て、だんだん手を広げていくとウキウキしてくる。
迷いや失敗や後悔は遠回りに思えてヤキモキすることもあるけれど、それを味わったからこそこんなふうに歓びが湧き上がってくるんだということを、彼女はダンスの振り付けを通して教えてくれた。
じわじわと鳥肌が立つような幸福感をありがとう。
この感動を瓶に詰めて取っておきたい。
( ..)φ
オープンしたばかりのアップリンク京都に行ってきました!
ギャラリーではドラン監督の公開授業が流れていたり(映画が始まるまでの40分ぐらいガッツリ観てた)、ショップはホドロフスキー監督のグッズだらけだったり、とても楽しくて居心地の良い空間でした。
来月もまたリバイバル行きたいなぁ。
(2020年6月22日 アップリンク京都にて鑑賞)
(2019年11月23日・24日 DVD鑑賞 ※再レビュー↓)
「失敗に見えたら、成功なの。」
ルームシェアしていた親友が急に出て行くことになっても、クリスマスショーのメンバーに選ばれなくても、フランシスは泣かなかった。
ブルックリン、チャイナタウン、カリフォルニア、ワシントンハイツ。
親友の友だち、そのまた友だち、そのまた知り合いのところに身を寄せ、時にはパリにまで行ってしまう。
パリにいるはずの友人から返事はなく、ライターの火は切れる。
見知らぬ街の、狭いエレベーター。アパートメントの一室で、彼女は一睡も出来なかった。
朝になり、それでも涙1つ見せず、睡眠薬を飲んでまた眠る。
「クリスマスショー見てないの。怒った?」
「いいよ、よくなかったし。」
「とうとう団員なのね。」
「たぶんツアーメンバーよ。」
「すごいじゃない。」
恋人もいて、住む家もあって、お金にも困っていない親友。
寒空のパリのカフェテラス、フランシスは本当のことを何一つ話せない。
「いつも対抗してた。」
「私に?考えもしなかった。」
「婚約も全部やめちゃって、またニューヨークに戻ってこようかな。」
「二人でブルックリンに住もうよ。」
「いいわね。」
大好きよ、おやすみ。
偶然再会した夜は幻みたいに、親友は元の生活へ戻っていく。
走り去る車を、彼女はどんな想いで見送っただろう。
フランシスは名誉学位を持っていない。
パリに別宅もないし、愛人もいない。
有名なモダンダンサーでもない、今はまだ。
彼女が振付を担当したダンスの発表会。
そこで表現されたのは、彼女自身の生活だった。
親友と別れ、男二人とルームシェア。
喧嘩したり寂しくなったり。
戸惑いや不安もすべて、舞台の上に紡がれていく。
彼女は自分の気持ちも生活も、とても大切にしていたのだ。
「そのままでいて。乱雑さも鏡好きも可愛いから。」
アパートの表札、入りきらなかったところを折り曲げてみる。そうやってこれからも、ほどよく折り合いをつけながら生きていく。
ああ、やっぱり私と友だちになってほしいよ、フランシス。
( ..)φ
クリスマス。帰省したフランシスは、犬の散歩や家の飾りつけを淡々とこなす。
けれどバスルームでオフィーリアになった彼女の髪は、ふわふわと漂っている。
フランシスよりも先に、私の方が泣きそうになってしまう。
「ハ~イ、レディース」「ジロジロ見ていいよ」
半裸でリビングを横断する彼があまりに素敵で、4回巻き戻した。
だけど、「せっかくの休日なのに半分ムダにしちゃった」といじけるフランシスに、「僕はベーグルサンドも食べたし、インターネットでサングラスを3個も買ったよ」の彼がいい。
ATMまで走っていく夜の、あのキラキラした音楽「大人は判ってくれない」。
映画を観ながらテイクアウト中華「マンハッタン」。
帰省するところからラストにかけてかかる「まぼろしの市街戦」。
他にも「クレイマークレイマー」みたいな場面(鍋の取っ手が熱すぎる)があって、めちゃくちゃツボを押された。
中でも、“恋愛・人生に求める、ある特別な瞬間”が最高だった。
デヴィッド・ボウイ「モダン・ラヴ」、
「汚れた血」が観たい。