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アントマンのmasayaanのレビュー・感想・評価

アントマン(2015年製作の映画)
4.0
※ブログにもアップしてます。
http://cinemaguide.hatenablog.com/entry/antman

特殊なスーツを着込み、縮小と膨張を繰り返しながら戦う男の物語、という点では、あの謎のズームを得意とするエドガー・ライトが、やはり文法的にも適任だったのではないかと思わなくもないけれども、想像していたよりもずっと良かった。劇場で見ればよかったなー。今までに観た『アイアンマン』以降のMARVEL映画では、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』に次いで気に入りました。

まず、アントマンとなる男が、西部劇的な「前科持ち風のタフな色男」ではなく、「ガチで前科持ちのインテリ崩れ」という微妙な設定なのが、やはりグッとくる。しかも、(誰もそんなところ気にしないだろうけど)彼の前科の内容(富める者から奪い、貧しい者に分け与えるというもの)は、ジェシー・ジェイムズなど、むしろ合衆国におけるヒーローの「正史」にあるものです(アメリカには「尊敬される犯罪者」というのが存在するのです、さすがは大資本、この辺はしっかり設計されています)。

で、もちろん、そんな神話が通じる時代ではないということは、アイスクリーム屋の店長との会話でうまくネタ化されており、笑えました。笑えると言えば、アントマンがスーツを着る理由がいいですよね。彼にとって、世界の均衡がどうとか、地球防衛隊の使命がどうとか、生まれた家系の運命がどうだとかはまったく関係ないわけです。で、そういう時、男子のための映画は何を原動力にしてきたかというと、「仁義」か「契約」ですね。つまり、文書化されている/いないかの違いを取っ払えば、ある「約束」のために彼らは頑張ってきた。多くの場合、命を落としつつ。

『アントマン』がユニークなのは、「でもヒーローになりたい~ただ一人 君にとっての~」という、三流バンドの歌詞のようにベタな、「あくまでも個人的な尊厳」のために頑張るところですよね、やっぱり。本当に、当たり前の結論になりますが、コメディ~ドラマを問わず「離婚もの」で多く採用されていそうなそうした構図(妻に見捨てられた男が、それでも娘に格好いいところを見せたい)に垣間見える小さなエゴ、しかも「任務を果たしたあとに・・・」とあではなく、普通にスーツの力で会いに行ってしまうちょっとしたズルさ。これは憎めないな~。

とは言え、地球防衛隊に加入してしまっては、彼もまた何かしらの使命なり契約に縛られていくのでしょう。あるいは、ちょっとした「お笑い要員」となるのか・・・・。ひとまずはこの映画に「イイね」しておきたい。『アイアンマン』×『フェイズⅣ』×『トイ・ストーリー』×『インターステラ―』的な佳作。
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