鋼鉄隊長

アントマンの鋼鉄隊長のレビュー・感想・評価

アントマン(2015年製作の映画)
4.0
TSUTAYAで借りたDVDで鑑賞。

【あらすじ】
3年の刑期を終えて出所したスコット・ラングは更生を誓うも、再び犯罪に手を染めてしまう。しかし彼が盗んだ獲物は、近代科学の粋を結集させた究極のパワースーツであった…。

 最近やたらに蟻を題材にした映画を取り上げている(ラインナップは「#蟻はロマンだ!特撮だ!」にあります)のは、この作品のレビューが書きたかったから。
 これはヒーロー映画では無い。蟻映画だ! いや、厳密には『縮みゆく人間』(1957)とかの方が近い気もする。劇中に度々オマージュしたような描写もあったし。とは言うものの、ちゃんと蟻たちは登場して活躍していた。もっと言うなら、僕は彼女たちこそが主役であったとすら思っている。ならば間違いなく蟻映画と呼んで差し支えない…はずだ。
 世にも珍しいクライム蟻映画。狙う獲物は、完璧な警備で守られた軍事用試作スーツ。挑む精鋭は曲者揃い。技術部門の専門家は南米の悪魔「ヒアリ」。破壊工作は、沖縄生まれのお転婆娘「ヒゲナガアメイロアリ」。頼れる用心棒には、ニカラグア出身の「サシハアリ」。そして、スコットの相棒は日本が誇るカミカゼ・ガール「クロオオアリ」だ! 各分野のエキスパートが集結した『スパイ大作戦』のようなチームである。そして何故か全員外来種。ひとたび野生化すると生態系を破壊しかねない困ったちゃんばかりだ。これはまさかの蟻版『スーサイド・スクワッド』(2016)⁉ 彼女らをスカウトしたピム博士は中々のワルである。博士と言えば彼の持つ戦車のキーホルダーは、何故かT-34/85だった。冷戦時代にアメリカに尽くした功労者があえてソ連戦車を乗り回すことから、技術を金儲けに使う堕落した祖国に対する静かな怒りが伝わってくる。悪党?で固めたチーム編成にも私怨が現れているのかも。
 このようにワルな要素ばかりが目に付いてしまうので、ヒーロー映画として観ることは僕には難しい。そもそもアントマンことスコット・ラングは元犯罪者。出所後も更生してはいない。アントマンとしてスカウトされてからも、がっつり窃盗と暴行を行っている。アメコミ映画としては、かなり変化球な作品に思える。だからこそ、切り口を変えれば違ったジャンルとして楽しめる。蟻映画として考えるのも、そこまで無茶な見方では無いのである。
 他の蟻映画はストイックにも蟻の物語一本で展開していることが多いが、今回は家族の話やアクションも取り入れているので非常に見やすい。蟻映画の入門としては最適な作品ではないだろうか。蟻に注目して観るのも、また一興である。
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