Utopia

アントマンのUtopiaのレビュー・感想・評価

アントマン(2015年製作の映画)
4.0
2015/09/30
刑務所から主人公が出てくるけど、どう見ても優男風で違和感がある。アメコミ映画のヒーローと言えども精悍さには欠けるルックスでこれまたしっくりこない。そもそもスーパーヒーローといえども変身すると小さく蟻サイズになるのでこれまたカッコ良いとも言えない。けど、娘といる時の父親としての子煩悩な表情はとても似合っていてピッタリとくる。そんな映画だ。

いわゆる正統派のカッコ良く、時に正義に悩むスーパーヒーローとは真反対のアントマンは、先述のギャップであらゆるシーンに笑いの要素を取り込み、劇場に笑い声が響くコミカルな仕上がりなのだ。

アントマンの変身した世界では、企業のシステムサーバは未曾有のダンジョンとなり、玩具が愛らしい子ども部屋は危機一髪の戦場へと生まれ変わる。今までにない視線で描かれるアクションはかえって新鮮でもあった。

兎にも角にも起こるアクションが実物サイズに置換するとスケールが小さく、何とも平和な気分になるのが微笑ましい。緊張感は途切れるが俯瞰的なショットをいくつも挟む事でコミカルさは更に増す。

大衆を守るだとか、地球を救うだとか、そんな大義名分を掲げる事もなく、愛おしい娘の為に行動をするシンプルかつ小市民的なモチベーションはとても親近感があり、思わず身を乗り出して応援したくなる。

ただ惜しく思えるのは前半パートの丁寧すぎるプロットが単調だったり、男女間の感情の機微を描くのがおざなりだったりと思えるところもあり、大傑作!には一歩及ばない気がした…。
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