くりふ

ダーティ・ピクチャーのくりふのレビュー・感想・評価

ダーティ・ピクチャー(2011年製作の映画)
4.0
【インドの女はそれを我慢できない】

Netfrixの配信にて。2011年作。1980年代、南インドで一瞬咲き誇った徒花女優、シルク・スミターの伝記“風”映画。

シルクを演じるのは、日本では『女神は二度微笑む』で知られるヴィディヤ・バーラン。彼女の演技力が背骨でエネルギー。仕上がりは歪だが、ヴィディヤパワーで最後まで引っ張る。暗澹と終わるも悪くなく、不思議な後味でした。

シルクはセックスシンボルとして成り上がり、当時“南のモンロー”とも呼ばれたらしいが、ある種天然だったモンローより、同時代なら、性的な価値を戦略的に使い、しかし性を売るばかりで短命に終わったジェーン・マンスフィールドに近いと思った。

本作によると、ある種開き直りなんですね。…アタシのそれしか売れないなら、それで天下取ったるわ!物語が始まった途端、ダッシュでそう決意する。切ないが、冷静でもある。揺るがぬ男尊女卑社会に嫌気もさしていたのでしょう。インドでのそれは説得力あります。

ググると、当時の映像ごろごろ見つかりますが、美女でなく品もないがシルクさん、真夏のフェロモンめ~らめら!ですね。当時のインド男子を狂わせたことは理解できます。

ヴィディヤさんは全く似ていないが、ヴィディヤパワーで全く気にならなかった。その役解釈にはただ感心。イタコ業なのに自分は保ったまま、みたいで涼しい。批評的憑依。大人だなあ、と思う。

役作りでここまで肥えたのもプロだよね。終盤の腹肉アップなんてオッサンか!と思った。南インドの女は肉の量!日本の女優は少しは見習おう。

シルクと絡む三人の男。重要な柱なのに、彼らとの関係がどうにも記号的で残念。シルクの愛が、愛か戦略か依存なのか、脚本的に曖昧。

ラジニカーントがモデルらしき、第一の男との“共犯”はまあ面白かった。撮影現場のドタバタは見どころで、"Ooh La La Tu Hai Meri Fantasy "はとにかく楽しい。

https://youtu.be/Yg-qlKb4X7U

後半は、シルクのエゴ肥大ばかりが続いて単調。で、自ら、若くして人生の幕を引いたらしきシルクの現実からは仕方ないが、こういう女は幸せになれない…と受け取られてしまう映画の結末は保守的だ。あくまで“自滅”に映るようになっているが、もう古いのでは?

そんなこんな。根は伝記だから、エンタメ仕上げだが弾けはしない。全体歪でも、ヴィディヤパワーがそれを凌駕。映画内側への満足度は並みだが、シルクへの興味に始まり、女性映画としての立ち位置など、映画の外からの掘り甲斐は詰まっている。みてよかった。

シルク本人の映画も、そのうちキチンとみたいなあ、と思ったことでした。

<2018.7.2記>
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