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嗚呼!おんなたち 猥歌のodyssのレビュー・感想・評価

嗚呼!おんなたち 猥歌(1981年製作の映画)
4.0
【ポルノだけど内田裕也が見どころ】

ポルノですが、ポルノの域を超える作品になっています。主演の内田裕也がいい。

もともと内田にはうまく説明できない個性があって、無軌道で何をやらかすか分からない役をやらせると味があります。日本映画にありがちな単なるヤクザじゃなくて、おのれの欲望に忠実で、法律も人情も道理も通用しない人間の、魅力というと美化しすぎで、アモルフな不気味さというのか、しかしその不気味さは他人や観客に襲いかかってくるよりも、最終的には内田自身に向けられるようなところがあり、そこが彼の最も彼らしい部分なのです。

この映画でも、色々な女とやりまくっていて、いちおう正式の妻もいるけど火宅だし、現在の愛人をそれなりに可愛がっているかというとそうでもないし、ロック歌手である彼の世話を親身になって焼いてくれるマネージャーの彼女にまで手を出すし、まったくどうしようもない男なんですが、そのどうしようもなさが最後には彼自身に向かっていき・・・結末は書きませんが、ラストが実に秀逸。

あと、上述のマネージャーとの関係が、この映画のもう一つの見どころ。女を寝取られたら普通怒って縁を切るだろうと思うんだけど、そうならない。男同士の友情、という域を超えていて、男同士の愛情、ですかね。肉体的にではなく、精神的なホモセクシャルかもしれない。

ポルノなのにそういう複雑な人間関係を編み込んでいる監督の技をほめるべきなんでしょうけど、これも内田裕也が主演だからこそ成り立っているように思えます。

ポルノだからレビューでも女優に言及すべきなんでしょうけど、裸のキレイなお姉さんたちも、内田の個性の前には影が薄くなっているようです。
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