みかんぼうや

リトル・フォレスト 夏・秋のみかんぼうやのレビュー・感想・評価

2.7
【橋本愛の田舎自然体験記。美しい画と優しい雰囲気は素敵だけど、純粋なドキュメンタリーとして観たかった、という思いも。】

フィルマでかなり高い評価だったこととU-NEXT3月末配信終了作ということで視聴。なるほど、高評価納得!オープニングから流れるなんとも美しい大自然とおいしそうな料理の画の数々。都会の生活に疲れて田舎に戻ってきた橋本愛演じる主人公が求めていた都会と異なるゆっくり流れる優しい空気感。自給自足の生活。癒しがたっぷり詰まった疲れた体と心に染みる秀作。

・・・なのでしょうけど、私には合わなかった~。これは完全に好みの問題で、映画に求めているものが満たされなかっただけの話です。だから、他の方の高評価は物凄く納得感があります。

本作はやはり物語性よりも、美しい画と空気感を堪能しながら自然に囲まれた生活を疑似体験するような生活スタイルに寄った作品なので、ここまで田舎生活に寄ってリアルに描くのであれば、逆にドキュメンタリーのほうが本物の自然生活を見ることができて見入っただろうな、というのが私の個人的感覚でした。

橋本愛は好きな女優さんですが、ドキュメンタリーではないので、やはりどうしても脚本と演出と演技と台詞によって作られた世界だと思って見てしまい、そう考えると、この村や都会で疲れた若者に自然生活を勧めるイメージビデオを観ているような感覚に陥ってしまいました。

もしくは、最初から“橋本愛の田舎自然体験”というテレビの企画として観ていたらもう少し感覚が違ったかもしれません。やっぱり“映画”として観ると、シンプルに物足りなさを感じてしまい、郊外生活も自然生活も大好きですが、久しぶりに途中で倍速再生を使ってしまいました。

ただ、本作を観ていて面白かったことが、最近沖田修一監督の作品をよく観ていて、彼の作品も大きな事件など起きない日常的な風景を描くのに、なぜ自分の中でこうも好みが分かれるのだろう、と思ったわけです。そこで気づいたのが、本作は“登場人物の日々の生活そのもの”を主軸に映しているのに対して、沖田作品は“他人との会話と人間関係”を主軸にしているところが面白さなのだろうな、と。本作は他の人物とのコミュニケーションや人間関係の描写がかなり少ないのですよね。沖田作品は、登場人物たちが魅力的で一筋縄ではいかない人間関係と会話の妙味が素晴らしい。だから終始ニヤニヤしながら全然飽きずに観ていられる。

まあ、沖田作品は日常の中にある“非日常”を映画的に描いていて、本作はできるだけリアルに田舎暮らしの“日常”を見せているわけで、作風も狙いも全然違うと思いますので、比べること自体がナンセンスだとは思います。が、本作を通じて、なぜ沖田修一作品に自分がハマり面白いと思うのかを気づかされたので書いてみました(本来、沖田作品のレビューで書く話ですね、すいません)。

が、冒頭に書いたとおり、とにかく美しく爽やかな作品なので、超高評価は納得ですし、ファンが多いこと自体はとても納得の作品です。続編の「冬、春」も同じようなテイストなのかな?冬・春の美しい画見たさに気になりつつも、他のマイリスト作品たちの中に割って入るか・・・う~ん、なかなか判断が難しいです。

あ、あと本作、音楽がとてもいい感じです。そして、作品に出てくる料理や野菜が本当に美味しそう!空腹時に観たので、なかなかの拷問でした。
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