ブラックユーモアホフマン

リトル・フォレスト 夏・秋のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

3.9
さすがロボットと言うべき、『ちはやふる』でも見られた、圧倒的なCG技術と映像美。特に真剣佑演じる新太の田舎の描写とはかなり通ずる。
映画というよりは、よくできたEテレの番組、及び橋本愛のPV。のように感じてしまうのは恐らく、1話1時間の4話構成全てで一つの物語を語っているから。起承転結それぞれに一時間をかけてゆったりと物語を進めているから。通常の映画の倍以上の時間をかけて物語が進む故。
とは言いつつも、スローライフのすゝめ的な側面がある本作だが、さすがに田舎を美化し過ぎでは?とも思う。物語が進むのはゆったりしているにも関わらず随所で使われるタイムラプスやジャンプカットの手法。それはズルい。本来田舎の生活ってのは、ゆっくりすぎる、退屈でしかない時間がもっと延々と続くのではないだろうか。それを映画ならではの省略によって美化してしまっているのは、田舎のスローライフに本当に真摯に向き合った結果なのかどうか疑わしく感じてしまったりする。自然の姿のありのままを映しているように見えて、実際は冷静に考えるとそうではない。もはや超現実的な映像ですらある。カメラで捉えれば確かにそう撮れるかもしれないが、人間の眼で果たしてどこまで見られるものなのか。感じられるものなのか。もちろんそういう瞬間が一切ないとは言わないけど。大変な瞬間ももっと沢山あるはず。基本的に主人公にそういう自然の怖さが襲いかかり苦難を強いられるという描写が、ないわけじゃないけど一瞬で済まされてしまう。良いところにフォーカスを当て過ぎている。
自然の営みと健康的な女子の組み合わせというのは、ありそうでなかった、けど確かにどこかに需要はありそうな組み合わせ。「全力坂」的ないやらしさを感じてちょっと気持ち悪い。けど、橋本愛の魅力を存分に楽しめる作品であることは間違いない。
自然の摂理や料理を人生になぞらえる。斬新な話法だとは思う。美味しそうだなーとはなるけど、物語性が希薄なので集中力が持続しない。しかしその分、永遠に見ていられる。料理をしていて、こうすればいいのか!と気づく瞬間。これぞクリエイティブ。これは良かった。
モノローグが作品のリズムを作っている。しかし、少し余計だなとも感じる。逆に言うと、モノローグがなければ成立しない映画とも言える。それはそれで手法としてはアリなのかな、とも思う。
『歩いても 歩いても』の冒頭を思わせる。是枝さんも言ってたが、料理の描写は音が大事。本作も良い音はしているんだが、少し音楽がうるさい。もうちょっと少なくていいのでは。
そういえば夏だけは観たことがあった。ことをすっかり忘れてた。やっぱり観た映画をその都度記録するっていうのは大事だな。
Netflixで観たが、これは是非スクリーンで観たかった。
しかし夜中に観るもんじゃない。腹が減って仕方がない。