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夜のとばりの物語のzoeのレビュー・感想・評価

夜のとばりの物語(2011年製作の映画)
4.0
光りと影の狭間にある、夢のような世界に手を伸ばしたとき、私たちは愛に包まれる。

“どれぐらい私が好き?”

『夜のとばりが下りる頃、愛はその深さを試される』

三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー作品。6つの物語をオムニバス形式で長編映画にした作品。

続編である『夜のとばりの物語-醒めない夢-』の方を先に観てしまいましたが、問題なく鑑賞できました。本作にはまた異なった魅力があり、どの物語にも愛だけではなく、人間の悪の部分もしっかりと描かれていました。

「狼男」ある姉妹が同じ青年に恋をするが、その青年が選んだのは姉との結婚だった。妹が悲しみに暮れるなか、沢山のひとに婚約を祝われた後に青年は自分が狼男であることを姉に明かす。

「ティ・ジャンと瓜ふたつ姫」カリブの島で口笛を吹きながら陽気に散歩していた青年は、知らぬ間に死者の国に迷い込んでしまう。そこで『瓜ふたつ姫』の噂を耳にし、その姫に会いに行こうとするが、それには巨大な蜂やイグアナをどうにか倒さなければいけなかった。

「黄金の都と選ばれし者」全てが黄金で出来た“黄金の都”では年に4回、守り神への生け贄として若く美しい娘を捧げるという風習があった。外から来た青年は、それを知り、生け贄候補となった娘と共に司祭と守り神に立ち向かう。

「タムタム少年」アフリカの小さな村に手当たり次第に物を叩き続け、音を奏でる少年タムタムがいた。しかし、周りからは狩りなど生活の役に立つことを身に付けるように言われる。そんな彼の夢は、叩いて音を奏でると人々を踊らせることができる“魔法の太鼓”を手にすることだった。

「嘘をつかなかった若者」国王の愛馬であるメロンギの世話をする若者は、決して嘘をつかないと知られていた。そのことを国王から聞いた隣国の王は、若者が嘘をつく方に自国の領土の半分を賭け、美しい自分の娘を刺客として送り込む。

「鹿になった娘と建築家の息子」建築家の息子チボーは恋人モードと愛し合っていたが、彼女には魔術師の婚約者がいた。チボーに嫉妬した魔術師は、モードを魔法で鹿に変えてしまう。彼女を探し出し、元の姿に戻すため、チボーは愛撫の妖精に助けを求める。

オスロ監督の言うように、とても気品のある作品。高貴な輝きがあり、誰をも魅了するであろう色彩美は妖艶な魅力を醸し出している。何度観ても惚れ惚れしてしまう。

本作のなかで、私が一番好きな物語は「嘘をつかなかった若者」。とても優しく、とても残酷なお話だけど、だからこそ記憶に強く残る。愛は時に人々を酷く傷付ける。
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