Bellissima

聖者の午後のBellissimaのレビュー・感想・評価

聖者の午後(2012年製作の映画)
4.0
『聖者の午後』@ユーロスペース

ネクストステージもネクストページも用意されていない、退屈な「今」だけを切り取った映画。うらぶれた者達の現在地は時に姿を笑いに変えがちだが、圧を抜いて間を増やした画面には深刻ぶらない空虚さだけがぶら下がり退屈は退屈のまま放置され閉塞感に足踏みを続ける。

日常を突き破る装置は劇的な運動を起す事なく瞬きのような暗転で切断される。焦燥感を抱えまま世界に投げ出されてた3人は歩みの鈍い亀を傍観し我々はそれを凝視する。漠然とした行き場のない感情の凝縮が画面の内と外で反復する。

世界中何処にでも転がっている青春物語がフレームを介し彼らと共通言語で会話する。黒の表現を豊かにする方向の画面作りは、すべてのシーンのカメラの画角がきちっと決まっていて影の諧調が美しい。降り続く雨が殺伐たる心象風景を洗い流し清廉の境地に誘うのだろうか。虚ろな逆説として響く。ジャームッシュ「ストレンジャー・ザン・パラダイス」へのブラジル サンパウロからの真摯なる返答。だれる所もあるがこうゆう作品は支持する。

*個々のシーンにあてがられたリズムのバリエーション、ニュー・ウェイビーなバンド、部屋で踊りに興じる時にかかるエレクトロなベースミュージック、音楽が凄く好みであった。
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