LalaーMukuーMerry

アマデウスのLalaーMukuーMerryのレビュー・感想・評価

アマデウス(1984年製作の映画)
4.4
これは初鑑賞時、私の中のモーツァルト像を全く変えてしまった、とても印象深い作品。モーツァルトのかん高い馬鹿笑い。
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小学校の音楽教室の肖像画でしか見たことのなかった異様なかつら姿で着飾った人たちがたくさん登場する華麗な宮廷の様子、なんといっても全編モーツァルトの名曲が流れ、目にも耳にも素晴らしい作品だった。
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久々に観直してみると、モーツアルトを描いた作品ではあるけれど、それ以上に全く知られていない作曲家サリエリの物語だった。天才の素晴らしさが誰よりも分かるから、自分の才能との違いに絶望し、嫉妬に苦悩する凡庸な作曲家。その対比がユーモラスでもあり、残酷でもあり、あまりにも見事だった。天才か凡庸かで分けたら、ほとんどの人は凡庸の側、自分の才能を嘆いたことがあるはずだから、サリエリの気持ちがわかるでしょう。   
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モーツァルトの死の真相がこの作品によって話題になったのだけれど、そこは置いといて、彼が貧しく死んで墓碑銘もなく集団で葬られたのは事実。彼の時代、”音楽”は大衆に広まり始めたばかりで、まだまだ王侯貴族のものだった。ヨーロッパはフランス革命からナポレオンに至る激動の時代を経て、”音楽”も民衆のものになる。モーツァルトの次のベートーヴェンが楽聖として人々から尊敬され、立派な墓地に埋葬されたのとは対照的。歴史に「もし」は禁物だが、モーツァルトがあと20年遅く生まれていたら、彼は民衆に熱烈に支持されて金に困ることもなく長生きし、もっとたくさんの名曲を残してくれたのかもしれない。