安堵霊タラコフスキー

アマデウスの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

アマデウス(1984年製作の映画)
4.3
この映画の存在を初めて知ったのは中学だか高校だかの音楽の授業だったが、そのときはまさかアカデミー賞で多数の候補と受賞に輝いた世界的名作だとは思わなかった。

そしてその理由の一つに有名俳優の不在があり、モーツァルトを演じたトム・ハルスもサリエリを演じたF・マーリー・エイブラハムも一般的に知られた俳優ではなかったから結構マニアックな文芸的映画なのだろうと思っていたけど、しっかりと見てみればモーツァルトの想像に反した奔放な人間性や彼に色んな意味で人生を狂わされていくサリエリの姿は衝撃的で忘れられないもので、確かにアカデミー賞ものの作品と感嘆した覚えがある。

しかし改めて考えると、元々が演劇とはいえ18世紀の神聖ローマ帝国を舞台にした作曲家の話をここまで面白く見応えのあるものに仕立て上げた点は凄いとしか言えず、この作品では職人的手腕が目立ったとはいえ作品をまとめ上げたミロシュ・フォアマンの力量には舌を巻く。(自殺未遂をして血だらけのサリエリから始まる点とか構成に大胆さが感じられるのも良い)

細かい点で時代考証が間違っていそうだったりサリエリの人生に大幅な脚色が入っていそうだったりと色々気になる箇所もあったけれども、モーツァルトの天才性とそれに嫉妬するサリエリが二十世紀に蘇ったような感覚がしっかり味わえるからそれだけで有難い作品と言わざるを得ないし、脚色によりクライマックスの崇高な共同作業等の見事なシーンが生まれたのだから結果オーライといったところだろう。

しかしエンドロールは大体見ずに終えてしまう自分も音楽のせいかついつい最後まで流してしまい、作中でもそうだがモーツァルトの音楽ってのは本当に魅力的だとつくづく思う。