人世とは何かを、ある一冊の本から紐解いていく映画です。過去と現在を交えつつ、本の関係者を訪ね歩くことで探求していきます。
スイスで教師をするライムントは、橋から身を投げようとした女性が持っていた一冊の本に心を奪われ、リスボンの地で著者アマデウを訪ねます。
アマデウはポルトガルのカーネーション革命でレジスタンスの一員をしていましたが、残念ながら既に故人でした。しかし、いくつかの偶然からアマデウを知る人達を訪ね歩き、彼の人生、愛、友人関係を知っていきます。
とても静かで、優しい映画という印象を受けました。現代のリスボンは明るい街、対する独裁体制下のリスボンは暗い雰囲気で撮影しています。
ただ、アマデウの独白や美女エステファニアとの逃避行で写し出される海岸沿いの景色など、要所に美しい絵を用意しているので、暗いイメージはあまり残りません。
ライムントが若きアマデウ達の濃密な人世を知り、自分の人世の薄っぺらさや自身の退屈さを嘆く気持ちが、どこか共感できるように思えます。何とも美しい映画でした。
出演者も最高で主人公にジェレミー・アイアンズ。
脇を固めるのは15年に亡くなったクリストファー・リーやブルーノ・ガンツ。
老練な演技が最高です。