マイメロのきもち

瞳の中の訪問者のマイメロのきもちのレビュー・感想・評価

瞳の中の訪問者(1977年製作の映画)
-
追悼でまずは未見作のこれを。

冒頭、女子寮のセットで「あ、大林は『サスペリア』観たな」と思ったのだが『サスペリア』が1977年6月25日、これが同年11月26日公開なので、もし参考にしていたとしたら『サスペリア』フォロワー映画としては最初期のものになるだろう、とはいえ既に『ハウス』を完成させていた彼のことだから自然に似た可能性もあり得る。

原作一話分の筋を100分で描けば流石に間延びしてしまうが(出崎統が監督したアニメ映画ではオリジナル脚本を用いこれを回避した)決して面白い点が無かった訳ではなく、たとえば峰岸徹が感情に任せてピアノを弾く場面では背景に手塚漫画の代表的キャラクター、ヒョウタンツギの絵画が映るが、これはある意味原作者の意にかなった表現ではないかと感じられる。というのも原作において手塚はこのキャラクターを一種の照れ、ユーモアとしてシリアスな場面にも頻繁に登場させるため、峰岸徹の長広舌が生み出す気恥ずかしさを打ち消す要素として大林が登場させたのは十分うなづける話、少なくとも他のシーンにおいて空回りする手塚治虫愛よりよっぽど良い。

登場シーンは多くないが、事故で一度は身体を失ったブラック・ジャックを自らの意思で整形してスターになった宍戸錠に演じさせているのも何かしら因果を感じずにはいられない…と、まあ大林ファンは観て損無い映画かなとは思う。