らくだ

紙の月のらくだのレビュー・感想・評価

紙の月(2014年製作の映画)
4.0
円満な家庭と銀行員としての順調な仕事ながらどこか満たされない生活を送っていた主人公が、ちょっとしたモノのはずみから大学生と不倫関係に堕ちてしまい、彼に貢ぐことに快感を覚えてしまう。その資金調達のためと良心の歯止めが効かなくなり、横領がどんどんエスカレートしてとんでもないことになっていく…という灰色と湿気に包まれた経済的バイオレンス映画です。

当初は幸の薄そうで儚げな主人公(しかも…宮沢りえですよ…?)の憂鬱や焦燥になんとなく同情や共感を覚えられるかな…?という気持ちでスタートするのですが、中盤以降良心のタガがバキっと壊れて金遣いや横領、何もかもがエスカレートしてくると「あっ…これ絶対共感とかしちゃいかんやつだ」ってなります。一時的にでも満たされるために、やってはならない手段に手を出してしまう、というのは分からなくはないですが…いや、わかっちゃダメだ…
主人公がプレゼントしたペアの腕時計をムゲに扱うかのように夫から贈られる高級腕時計とか、金遣いが荒くなってからどんどん荒れ果てていく自宅のリビングルームとか、そういう細かい所の「じっとりとした闇」の描写が執拗で、観てるといい感じに心が削られていきます。それがまた心地よい(薄暗い人間なので)
そんな中で横領のしっぽをつかんでくる真面目な同僚が、またこの人がほんとに怖くて、この点だけに限れば「主人公何とかバレずに逃げ切ってくれ!!」とハラハラ、ヒヤヒヤするのですが、最終的には「なんか、なんとかみんな救われてほしい…みんな笑顔で暮らそうよ…」みたいな気持ちになります。ました。
でも横領が発覚した時の偽造文書の数が「ペラッ」でも「バサッ」でもなく「ドス!!」なので…もう同情の余地がない…横領しすぎ

そして、映画のラストの主人公の関係者たちのショットが映されるのですが、それがあまりにも残酷で、あまりにもつらい…どうしてこんなことに…
らくだ

らくだ